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    • 環境DNAの調査は、環境水を採水し、採水サンプルをフィルターなどによって濾過してDNAを捕集したのち、濾物からDNAを抽出し、そのDNAを分析する、という手順で行われます。この最後の分析の過程には、現在大きくわけて2 つの方法があります。特定の分類群に含まれる多くの種を網羅的に検出するメタバーコーディング法(多種同時並列解析法)と、ある1種の生物のみを対象として検出する種特異的検出法です。この2つの検出法にはそれぞれ異なる利点があります。前者は一度の分析で多種を同時に検出することができ、後者は対象とする生物のバイオマスの指標となるようなデータを取得することができます。

      メタバーコーディング法には多くの種類のDNAを同時に増幅できるユニバーサルプライマーが必要となります。現在は、ある分類群に共通な2カ所の保守的な配列に挟まれた、種ごとに異なる比較的短い塩基配列を読むことで、その分類群の多数の生物種を一度に判別する、という方法がとられています。このプライマーを使ってPCR (Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応) によりDNAの断片を増幅し、次世代シークエンサーで塩基配列を決定します。得られた塩基配列をリファレンスと比較して配列が一致する生物がいれば、その種が環境中に存在していたと推定することができます。これまでに、魚類、両生類、哺乳類など色々な分類群に有効なユニバーサルプライマーが開発されています。


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