セクションアウトライン

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      乾燥したダルス試料に水を加えると赤色の成分が容易に抽出されてきます。その抽出液の色は、太陽光のもとでは鮮やかな赤色を示し、グリーンライトを当てると強い蛍光を発します。このような特性は、ダルス葉体中の主要なタンパク質である『フィコビリタンパク質』に由来します。紅藻類において、フィコビリタンパク質は、クロロフィルが吸収できない波長の光を効率よく吸収するという、光合成の補助色素としての働きを担っています。






















      一般に、紅藻類のフィコビリタンパク質は、主にα鎖とβ鎖という2種類のサブユニットから成り、それらが3個ずつドーナツように円形に組合わさった構造体を形成します。そして、このドーナツ状のものがさらに会合してフィコビリソームという巨大な集合体をつくります。フィコビリソームは、葉緑体のチラコイド膜の表面に沢山整列して存在します。紅藻類の主要なフィコビリタンパク質は、赤色のフィコエリスリン、青色のフィコシアニンおよび紫色のアロフィコシアニンです。それらの色調は、α鎖およびβ鎖のアポタンパク質に結合する色素の種類(フィコエリスロビリン、フィコシアノビリン、フィコウロビリン)と数によって決まります。

      ダルスから調製したタンパク質抽出液をスペクトル分析に供したところ、ダルス由来フィコビリタンパク質の主成分は赤色のフィコエリスリンで、次いでフィコシアニン、アロフィコシアニンの順であることが判明しました。そこで、ダルスのフィコエリスリンを精製して結晶を作製し、X線結晶構造解析によりその立体構造を決定しました。その結果、ダルス・フィコエリスリンは、他の紅藻類のものと同様の立体構造特性を有しておりました。また、ダルス由来フィコビリタンパク質の遺伝子構造を解明するため、フィコビリタンパク質の遺伝子がコードされる葉緑体DNAを次世代シーケンサで分析しました。その結果、3種フィコビリタンパク質(フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン)の遺伝子構造と一次構造が明らかになりました。