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    • カロテノイドは光合成補助色素として、集光機能に加え、過剰な光を熱として散逸する働きをもった脂質成分です。陸上植物はもとより、紅藻や褐藻、緑藻問では、それらに含まれるカロテノイドの種類が大きく異なっています


    • ダルスに含まれるカロテノイドのTLC分析












                      図1:ダルスに含まれるカロテノイドのTLC分析

    • 図1に示すように、褐藻のワカメではフコキサンチンが主要なカロテノイドであるのに対し、紅藻のダルスではβ-カロテンに加え、ルテイン/ゼアキサンチン(シリカゲルTLCでは同じ位置に展開され区別できません)が高い割合で含まれています。一方、ホウレン草では、明瞭ではありませんがβ-カロテン、ルテイン/ゼアキサンチンに加え、ビオラキサンチン、ネオキサンチンなど複数のカロテノイドが含まれており、緑藻も類似の組成で、紅藻とは異なります。

      このように、ダルスに高い割合で含まれるルテイン/ゼアキサンチンは、近年世界的に問題となっている高齢者での加齢黄斑変性症に対して予防効果を発揮することが報告されています。ダルスを直接摂取することによる予防効果については、その含量や吸収性を含めて詳細に検討する必要がありますが、興味深い脂質成分といえます。

      ダルスには、前項で紹介されているように機能性をもった糖質やタンパク質成分が含まれています。そのような含量の多い有用成分の利用が可能になれば、抽出した粉末には脂質成分が濃縮されて残存することになり、新たな利用法につながるかもしれません。ダルス脂質成分については、その機能性や利用法を含めた研究展開が期待されます。