
これまでにも国内外の研究グループにより、ニオイ情報を刷込む降海時期に各種神経伝達物質の脳内濃度が上がることや他の生物種で長期記憶に関連することが知られるシナプス後部の神経伝達物質受容体を構成する分子の一部の遺伝子は,サケの脳において降海時に発現上昇すること等が示されており、サケ類の刷込時期のシナプス可塑性の重要性が指摘されています。この神経伝達物質受容体はシナプス後膜で機能する分子ですが、サケ類の嗅神経系や脳においてシナプス前部で機能する分子については全く不明でした。最近、私たちの研究グループでは、シナプス前部においてシナプス小胞中の神経伝達物質の開口放出の制御に関わる可溶性N-エチルマレイミド感受性因子接着タンパク受容体 (SNARE) 複合体に着目しています。SNARE複合体を構成する主要分子である、シナプトソーム関連タンパク25 (SNAP-25) 、シンタキシン-1 (STX-1) および小胞関連膜タンパク2 (VAMP2)について、母川刷込関連時期でのサケ(シロザケ O.
keta) の嗅覚器官および嗅覚中枢(嗅球+終脳)での遺伝子発現動態を、cDNAクローニングとリアルタイムPCRにより解析しました。