セクションアウトライン


    • サケ類の嗅神経系は、前後の鼻孔により外界と通じる鼻窩の底部にその末梢の嗅覚器として,「嗅房」が存在しています。魚類の鼻は、ほ乳類とは異なり咽頭に通じておらず、外界の水が鼻窩内を通過していきます。サケ類の嗅房は、成魚では15〜20枚の嗅板からなり、中心点が吻側にやや偏った放射状に配置しています。各嗅板は二次褶曲という凹凸構造で表面積を増加させ、その表面は嗅上皮と非感覚性上皮で被われています。嗅上皮には、ニオイ受容を行う嗅細胞(嗅覚受容細胞)が存在し、自由表面側の嗅小胞部の形態が異なる線毛性微絨毛性の嗅細胞が存在します。サケ類の嗅上皮もほ乳類のものと同様に約1ヶ月で基底細胞から成熟嗅細胞へとターンオーバーしていることも明らかにされています。近年、第3の嗅細胞として、クリプト細胞という型のものも報告されています。受容されたニオイ刺激は、1つの嗅細胞から1本脳へ伸びる軸索を伝わり、情報を中枢へ直接伝達します。サケ類ではこの軸索は束となり第Ⅰ脳神経である嗅神経を形成して、嗅覚の一次中枢である嗅球へ投射します。嗅球内で嗅神経は、一次ニューロンである僧帽細胞の樹状突起と糸球体層でシナプスします。嗅球で識別処理を受けた嗅覚情報は、より上位の終脳に伝達され記憶形成されると考えられています。