單元大綱

    •  グラブ式採泥器は左右に開く半円形のバケット(グラブバケット)を用いてクレーンゲームの様に海底の堆積物を掴んで採取する採泥器の総称です。採取時に試料を攪乱してしまいますが、観測作業の操作の割には一定面積の試料を採取できることもあり、堆積物表層の性質や大まかな堆積物中の成分組成を調査するのに簡便な方法であります。また、堆積物中や海底表面に生息する底生生物を採取する目的でも使用されます。代表的なグラブ式採泥器としてオケアングラブ採泥器、スミスマッキンタイヤ採泥器、エクマンバージ採泥器があります。

    • オケアングラブ採泥器

       オケアングラブ採泥器はグラブバケットと天秤式トリガーを組み合わせたグラブ式採泥器です。採泥器が海底に近づくと天秤式トリガーが作動して採泥器が自由落下します。その落下の勢いでグラブバケット部が海底にめり込みます。採泥器の重量が大きいため砂礫のような比較的固い底質でも試料を採取できます。ワイヤを巻き上げるとグラブバケットが堆積物を掴み上げ、それに連動してグラブバケットの上蓋も閉鎖します。上蓋は採泥器を回収する際に海中でバケット内の試料を流失させない役割があります。この採泥器は底質が柔らかすぎるとグラブバケットが海底に埋まってしまい堆積物表面の試料を上手く採取できません。


          図7 オケアングラブ採泥器 

      画像提供:産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門

      オケアングラブ採泥器
            図8 オケアングラブ採泥器 作動概略図

    • スミスマッキンタイヤ採泥器 

       スミスマッキンタイヤ採泥器はグラブバケットとバネの力を利用してバケットを閉鎖する装置を金属製の枠に組み合わせたグラブ式採泥器です。海底付近から自由落下させて採泥器本体を海底にめり込ませます。通常はグラブバケットの部分まで埋まって、同時に枠に取り付けられたトリガーが作動してグラブバケットとその上蓋が閉鎖します。この採泥器はオケアングラブ採泥器と比較するとグラブバケットの厚みが薄いので軽量です。底質が比較的固い堆積物である場合は枠に錘を追加装着することで自重を増して観測を行います。取り扱いが簡便であり、一定面積の海底をえぐり取ることが出来るので浅海域での生物調査によく利用されています。


        図9 スミスマッキンタイヤ採泥器

       画像提供:鳥取県水産試験場 (https://www.pref.tottori.lg.jp/item/838972.htm

      スミスマッキンタイヤ採泥器
         図10 スミスマッキンタイヤ採泥器 作動概略図

    • エクマンバージ採泥器

       立方体の箱の底面にバネの復元力を利用して閉鎖するグラブバケットを取り付けたグラブ式採泥器です。まず、採泥器を海底まで降下して着底させます。その後、メッセンジャーを投下してトリガーを作動させると、グラブバケットが閉鎖して堆積物が採取できます。グラブ式採泥器の中では最も簡易型・小型の採泥器であり、湖沼、内湾あるいは極沿岸での簡易な調査に適しています。


         図11 エクマンバージ採泥器

           画像提供:株式会社 離合社