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    •  下の絵は、地球表層でのヨウ素の物質循環を表しています。大気と海洋が接する場所に「org-I」があります。これは、organic iodine (有機ヨウ素)を表しています。海から大気へ揮発する有機ヨウ素は、有機ヨウ素ガスです。海洋由来の有機ヨウ素ガスは、大気にヨウ素原子を供給する重要な役割を果たしています。そのため、古くから、大気や海洋表層の有機ヨウ素ガスが調べられてきました。



    •  上の絵では、海洋堆積物層にも、org-I(気)や、org-I(固)が記されています。ヨウ素を豊富に含む海洋植物が死んで、その有機物が海底に堆積すれば、海底堆積物中にヨウ素が蓄積すると思われます。千葉県の太平洋沿岸地域では、地下深くのメタンガス層の潅水に高濃度のヨウ素が蓄積しています。その蓄積理由として、昔、ヨウ素を含む海洋植物が多量に堆積した結果と考えられています。有機物豊富な堆積物中のヨウ素なので、ある部分は有機ヨウ素(org-I)と思われます。そのため、上の図では、想像も含めて、org-I(固)を記しました。

       堆積物中の有機ヨウ素ガス(org-I(気))の存在を調べているのは、世界でも、私たちの研究室だけです。(2018年から始めました) まだ、論文として研究成果が発表されていませんが、その背景を紹介したいと思います。