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    •  地球のヨウ素のほとんどは地殻中に存在します。火成岩中のヨウ素は、太古の昔から地殻中に固定されているものと思われます。南米チリのアタカマ砂漠で採掘される硝石に高濃縮されています。海洋堆積物や、それが地殻に隔離された堆積岩中にも豊富に含まれます。これらで、地球上の99%以上のヨウ素を占めています。しかし、これら地殻中のヨウ素は、ほぼ固定されていて動きません。(河川水や地下水と接したときに風化により溶けだすだけ。それと、火山ガスとして僅かに放出されるだけ)

       地球上で動的なヨウ素の99%は、海水中に無機ヨウ素として存在します。ヨウ素を移動させる最も大きなものは生物(海洋植物)の力によるものです。年間、12×1012 g のヨウ素が海洋植物に取り込まれ、ほぼ同じ量が海水に戻ります。海洋と大気の間では、年間5×1011 g 移動しています。あとで述べますが、海洋から大気へのヨウ素の放出も、海洋植物の力が働いていると考えられています。このように、海洋植物は地球のヨウ素循環を駆動しているといえるのです。



      Fuge and Jhonson (1980) The geochemistry of iodine -a review, The environmental geochemistry and health, 8(2), 31-54.

       通常、物質循環の収支を表すときは、流入量と流出量がバランスすべきなのですが、上の図ではバランスしていません。ヨウ素循環の見積もりに不確実性があるからと思われます。