分析技術の発達は、海水中に含まれる微量成分の検出を可能にしました。このことで、海水成分のわずかな違いや、海水中に微量にしか存在しない元素の量を精度よく測定するために採水方法にも工夫が施されてきました。特に近年、海水中の微量元素の分布が、海洋における生物活動の動態を明らかにするカギとして注目されて以来、海水試料のサンプリング過程で生じうる試料の汚染を可能な限り低減させて採水する手法が提唱されました。この手法は「クリーン採水」とよばれ、採水器の形状が改良されると共に採水器の取り扱いに関する注意事項が確立されました。
船舶を利用して採水を行い、海水分析によって情報を得るには非常に多くの時間や労力が費やされます。そこで、いくつかの特性(塩分、水温、溶存酸素濃度、pHなど)についてはそれらを計測する水中センサが開発され、現場(海の中)で直接的かつ連続的に計測されるようになりました。しかし、未だ、センサの開発の無い分析項目や、センサでは得られない高精度な情報を得るために海水試料を分析する方法がとられています。