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    • キアンコウは北海道以南の日本周辺に見られる魚で,特に太平洋北部海域では底建網,底刺網の重要な漁業対象種となっている。主要産地のひとつである青森県の漁獲量は,2009 年までは 900 トン前後で推移していたが,それ以降,減少傾向にあり,2017年は310 トンまで低下している。

      本種は主に水深200 m以浅の大陸棚上に生息し,水温の変化や繁殖のため深浅移動を行う。年齢と成長については,魚類でよく用いられる耳石上に1年に1輪形成される年輪を用いた査定が困難であるため,長年研究が進んでいなかった。近年ようやく,背びれの棘に形成される輪紋が年齢形質として有効であることが分かってきたところである。産卵期は表層水温が13°Cになる頃,水深60 m以浅に移動して行われる。卵は凝集浮性卵に区分され,個々の卵は直径およそ1.3 mmで,卵帯(長さ35 m,幅4050 cm)中に収められている。卵帯は表層付近を漂う。ふ化後の生態についてはまだ謎が多い。

      本研究室では,キアンコウの資源量変動に大きく影響すると考えられる,仔稚魚期の生態(餌生物や成長速度)を明らかにしようとしているところである。また,野外で産卵された卵を水槽内でふ化させて飼育することによりこれまで不明であった本種の初期生態を解明する予定である。