スルメイカは,亜熱帯から亜寒帯域の大陸棚と大陸棚斜面に沿って回遊する重要な漁獲対象種であり,寿命は約1年とされている。成長に伴って動物プランクトンから中小型の魚類(アジ,イワシ類)やイカ類(共食いを含む)を摂餌する。産卵は日本周辺の海で春・夏・秋・冬と1年を通して行われている。これまで,主な産卵期は秋(10~12月)から冬(1~3月)とされてきたが,地球規模の環境変化に伴い,再生産環境も大きく変化している可能性がある。本種の資源変動要因について,他の水産資源同様,生活史初期の生残の良否が影響していると考えられている。
本種の生活史初期に関する知見として,野外でふ化後間もない幼生は18.5 ºC以上の表層に分布することは知られているが,卵黄吸収後の栄養源(摂餌開始期の餌)に関する情報はない。また,本種の人工授精技術は確立されており,飼育環境下で卵発生およびふ化幼生の発育・行動の観察が行われている。しかし,卵黄吸収後,活発に摂餌を行い成長した例はない。本研究室では,ふ化幼生が成長するために必要な栄養源の探索を行っているところである。