セクションアウトライン

    • 上のMn(OH)2溶解反応(Mn(OH)2→ Mn2+2OH- )において、平衡定数(K)の値が与えられていれば、反応が進む条件(溶解が進むか、沈殿が増えるか)を簡単に計算できます。

       

      平衡定数K = 1.6×1013だから、

      [Mn2+][OH-]2   <  1.6×1013 であれば、溶解が進む(原形→生成形)。

      [Mn2+][OH-]2   >  1.6×1013 であれば、沈殿が増える(生成形→原形)。

       

      例題1)温度25℃、pH9、[Mn2+] = 0.16 mol/Lのとき、水酸化マンガンは沈殿するでしょうか? 


      [OH-] = 10-5 mol/Lだから、

      [Mn2+][OH-]2 = 1.6×101×1010 =  1.6×1011 (> K) なので、Mn(OH)2の沈殿が生じる。

       

      例題2) 温度25℃、pH9、[Mn2+] = 1.6×10-5 mol/Lのとき、水酸化マンガンは沈殿するでしょうか?



      [OH-] = 10-5 mol/Lだから、

      [Mn2+][OH-]2 = 1.6×105×1010 =  1.6×1015 (< K) なので、Mn(OH)2の沈殿があれば、溶解が進む。

       

      例題3) 温度25℃、pH11、[Mn2+] = 0.016  mol/Lのとき、、水酸化マンガンは沈殿するでしょうか?


      [OH-] = 10-3 mol/Lだから、

      [Mn2+][OH-]2 = 0.016×106 =  1.6×108 (> K) なので、Mn(OH)2の沈殿が生じる。

       

      例題4) 温度25℃、pH11、[Mn2+] = 1.6×10-7 mol/Lのとき、水酸化マンガンは沈殿するでしょうか?


      [OH-] = 10-3 mol/Lだから、

      [Mn2+][OH-]2 = 1.6×107×106 =  1.6×1013 (=  K) なので、平衡状態である



    • 【ウインクラー法の捕捉】

       例題3)と4)より、溶存酸素測定の試水(100mL)に、濃厚なMn2+溶液(1.6 mol/L)1mLだけ添加すると(Mn添加量は1.6×10-3 molに相当)、試水中のMn2+濃度は約0.016 mol/Lになる。

       ここに、NaOH溶液(0.1 mol/L)1mL添加すると、試水のOH濃度は約10-3 mol/Lになる(pH11)。すると、Mn2+の溶解平衡濃度は 1.6×107 mol/Lになるから、この濃度に低下するまでMn(OH)2の沈殿が生じる。試水中に加えたMn量は1.6×10-3 molで、生ずる沈殿量は1.59998×10-3 mol (=1.6×10-3 mol 1.6×107 (mol/L)×0.1 (L))である。ほぼ全てのMnが沈殿することがわかる。

       溶存酸素測定で添加するNaOH溶液は9 mol/Lなので、かなり過剰な量のOHが加えられている。分析に際しては、過剰なOHを打ち消すだけ十分な量のHCl6 mol/L)を3 mL添加するので、試水は酸性(pH < 1)になり、Mn(OH)2MnO(OH)2の沈殿は全て溶解する。