対象成分を含まない試料を「空試料」とか、「ブランク試料」という。これまで幾度も述べてきたように、環境分析化学においては、ブランク測定は分析結果の品質を担保するうえで極めて重要である。どれだけ低濃度まで定量可能なのか、対象成分の汚染の影響はないのかなど、分析化学で様々な問題に対処するとき、必ずブランク試料を測定する。
機器ブランクと操作ブランク
分析装置の試料導入口に、理想的なブランク試料を導入して計測すること、もしくは何も試料を導入しないで計測することが機器ブランクである。ここで、理想的なブランク試料とは、水分析であれば超純水、ガス分析であれば超高純度窒素などである。装置自身の性能を示すときに機器ブランクの結果が用いられる。
これとは別に、環境分析化学では、操作ブランクを調べることが極めて大事である。操作ブランクとは、試料の採取から、保存、試料の前処理、分析装置への導入まで、ブランク試料に対してこれら全ての操作を施したときのブランク測定のことを意味する。なぜ、そのようなことが必要なのだろうか? 本書の冒頭でも述べたように、環境分析化学では、地球上あらゆる場所から試料を採取して、なんとか実験室に持ち帰り、ようやく分析に至る。環境試料中のピコグラムとか、フェムトグラムとか、超微量成分を検出することもある。どの操作で、試料が汚染したり、損失したりするか、予測不能な事態も起こり得る。操作ブランクを調べて、環境試料の分析結果の妥当性を担保しなくてはならない。
引き続いて、雨水に含まれる成分を調べるときの操作ブランクについて、簡単に説明しよう。