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    •  ところで、先のコースにて、練習問題(1)の標準試料①は、濃度がゼロのブランク試料であるのに、ソコソコ大きな信号強度(453)があるではないか。ブランク試料でピークが表れるということは、試料調整に用いた水にNO3-が混入していたか、実験室の空気からNO3-が混入したか、分析装置のラインにNO3-の汚染源があったか、何かしら問題がありそうだ。そのような問題の不安を解消するため、必ずブランク試料を何回か測定し、そのバラツキ(標準偏差)を求めておく必要がある。

    •  ブランク試料(イオンクロマトグラフィの場合、純水)を11個用意して、イオンクロマトグラフィーで測定し、その平均値と標準偏差を求めよう。標準偏差が大きいとバラつきが大きく、標準偏差が小さいとバラつきが小さい。信号強度が全て同じ値であれば、標準偏差はゼロになる(バラつきがない)。

    • ブランク試料(11個)の測定結果

      ブランク試料の信号強度:453, 469, 401, 499, 423, 503, 483, 433, 492, 429, 512

      ブランク試料の11回測定の信号強度の平均    :463

      ブランク試料の11回測定の信号強度の標準偏差(σ) 37.6
       

      分析化学では、

      定量下限:ブランク測定の【平均値+標準偏差の10倍(10σ)】

      検出下限:【平均値+標準偏差の3倍(3σ)】を検出下限の必要条件とすることが多い。

      (※ 定量下限や検出限界については、次に詳しく説明する)

       

       このケースでは、標準偏差の10倍(10σ)は376である。この分析による定量下限の信号強度は839(=平均+10σ)と定めることができる。仮に、未知試料の信号強度が839に満たなければ、濃度値を記すには不確実性が大きすぎるので、定量下限未満,LOQ: Limit of Qualification」と報告すべきである。NDNot determined)と記してもよいが、これはNot detected(検出しない)の略と同じになってしまう。定量下限については、LOQを使った方が誤解を生まない。