(C)の対処法(未知試料の測定結果が標準試料測定の範囲を超えてしまった)
未知試料の信号強度は、標準試料の信号強度の範囲に収める必要があるので、さらに高濃度の標準試料を用意して、検量線(直線)でカバーできる濃度範囲を広げることを試みた。
追加で、高濃度の
標準試料⑦:
0.7 (mg L-1)と⑧:
0.8 (mg L-1)を作って測定した。その結果を図3(⑦と⑧)に追加した。

図3 高濃度の標準試料⑦と⑧の測定結果をプロット
高濃度の標準試料⑦と⑧を測定すれば、検量線の延長線上(図3の破線上)にプロットされると期待したが、図中の紫色の曲線で示すように、期待したよりも小さな信号強度となってしまった。これは、NO3-濃度が0.5 (mg L-1)を超えた範囲では、いくら濃度が高くなっても、それに比例して信号強度が大きくならないことを意味する。つまり、信号強度が頭打ちになってしまったのだ。
イオンクロマトグラフィーでは、カラムが保持できるイオンの量には上限があり、カラムのイオン交換樹脂がイオンで飽和(Saturate)して定量上限を迎えてしまったのである。そのようなときは、カラムが保持できる上限濃度を超えないように、分析試料を希釈する必要がある。未知試料(C)の信号強度(ピーク高さ)は9.3・105 だったので、図中の回帰曲線(紫色実線)から、その濃度は大よそ0.6~0.7 mg/Lの範囲にあることがわかる。つまり、この未知試料(C)の体積が二倍になるように希釈(二倍希釈)すれば、その希釈液の濃度は0.3~0.35 mg/Lになることが期待される。そうすれば、検量線(直線)の範囲に収まるだろう。このように、高濃度の分析試料を希釈すればよい。ちなみに、分析にて、飽和する様子を「サチる(= サチュレーションする)」という。上図の紫色線⑦⑧のように、サチってきたら、手間を惜しまず、逐一希釈しよう。
なお、イオンクロマトグラフィーに限らず、ほぼ全ての分析手法において
定量上限が存在する。繰り返しになるが、
低濃度~高濃度の標準試料を用いて検量線を作成し、その範囲内に未知試料の信号強度が収まるようにしなくてはならない。