解析の考え方
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◆物理環境
ある水域における物質濃度の分布は,物理的な環境と密接に関係します。物理環境を決定づけるのは,おおむね水温と塩分で決まる密度です。密度の異なる海水は混ざりにくいため,例えば鉛直的には密度のより大きな水がより深部に位置し,層状の鉛直構造を作ります。このような状態を成層化と呼びます。表層と底層で栄養塩の供給や消費のプロセスが異なれば,各層での栄養塩濃度には違いが生じます。また,塩分の低下は淡水が供給されたことを示唆します。主な淡水供給源である河川水は一般的に栄養塩濃度が高いため,塩分の水平分布を知ることで河川水の供給の影響を考えることができます。そのため,栄養塩濃度の分布を調べるうえでは,その水域での水温と塩分の時空間分布を調べることが出発点となります。◆植物プランクトンと栄養塩
植物プランクトンは肉眼ではほとんど観察できない微細な単細胞生物であり,海水中に浮遊しています。植物プランクトンは太陽光のエネルギーを使って二酸化炭素から有機物を作り出し,細胞分裂して増殖します。植物プランクトンの増殖は光合成に必要な十分な光量に加えて,栄養分を必要とします。植物プランクトンにとっての不足しがちな栄養分として窒素,リン,ケイ素の三つが挙げられます。海水中の窒素は硝酸塩,亜硝酸塩,アンモニウム塩(NO3,NO2,NH4),リンはリン酸塩(PO4),ケイ素はケイ酸塩(SiO2)として溶解しており,総称して栄養塩と呼ばれます。これら栄養塩の存在量が植物プランクトンの増殖の多少を決定するため,植物プランクトンの増殖環境を考えるうえで海水中の栄養塩濃度を把握することが重要です。また,植物プランクトンの増殖は栄養塩の消費を伴うことから,栄養塩濃度と植物プランクトン量の変化を合わせて理解する必要があります。植物プランクトンと栄養塩の量的関係は,それほど単純なものではありません。ある時ある場所の海水中の栄養塩濃度が高かったので,植物プランクトン濃度(量)も高い,という訳では必ずしもありません。物質の濃度は,その瞬間にその場所に存在していた量を示しています。一定時間前にどうだったか,あるいは一定時間後にどうするか,はわかりません。時間経過に伴う濃度の変化が分かると,その場で起こっている現象を説明する手掛かりとなります。閉鎖空間が仮定できた場合,ある期間に植物プランクトン量が増えたら,栄養塩濃度は減少します。しかし,実際の自然環境は閉鎖空間ではないので,物質は水平的あるいは鉛直的に移動します。濃度の変化が何を意味するのかを考えるためには,多くの基礎的知識が必要となるし,必要な情報が欠けていたら想像することすら難しくなります。とはいえ,我々が利用できるデータは【濃度】の値であることがほとんどであるため,今ある知識を総動員して,新たな解析手法を勉強して,海の中に隠されている現象を解明してみたいものです