長崎大学 水産学部1年 石川琳子
この度は、共創の場×CREENカリキュラムに参加し貴重な体験をさせていただきましたこと、また、本プログラムに伴う関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
1. はじめに
今回の共創の場×CREENカリキュラムでは、サーモンの養殖現場に訪問しました。養殖場の生け簀での餌やり体験の他、加工工場の見学をさせていただきました。加工工場の見学は、株式会社古清商店様にご協力いただきました。
2. サーモン養殖の現場
今回訪問させていただいたサーモン養殖場は、松川雅樹さんらが管理している海面養殖形式での養殖場となっています。ここで生産されるサーモンは、主に函館サーモンとして販売されており、体長が大きく、上質な脂乗りが特徴です。
管理リーダーの松川さんですが、元々養殖業者だったわけではありません。3年ほど前に潜水士免許と船舶免許を取得した後、ほぼ独学でこの養殖場を進化させてきました。最初は3㎡の大きさから始まった生け簀は今や12㎡まで拡大され、今後もより大きくしていく予定であるそうです。また、養殖魚は市場で競りにかけて値段を決めるのではなく、それぞれ単価が決まっています。単価を構成する要素としては、餌代や人件費、生け簀の管理費やその海域の利用費等があります。養殖業では、これらの要素を合計した金額よりも高値で売ることで、儲かることができます。しかし養殖業において黒字を出すことはかなり難しいと言います。松川さん自身も、養殖業で黒字続きになるにはまだまだであると仰っておりました。それでもこの先何十年と体が元気である限り、養殖を続けていきたいという思いがあることも語ってくださいました。松川さんは、養殖業などの湾内で行う漁業のメリットについて、次のように述べています。
「現在生け簀が設置されている漁港では、漁師を営む方達も多く利用している。その漁師さん達の平均年齢は約75歳で、今でもとてもお元気に活躍されているが、若い時のように沖へ出てバリバリ活動するようなことに体がついていかなくなる年齢でもあると思う。では沖へ出ずに、湾内やその周辺での漁に移行してみてはどうか。」
正直、この発想には驚きました。沖合漁業や沿岸漁業で、湾を出ることは当たり前のように思っていましたから、湾内で体に気を使いながらできる漁というのはかなり魅力的であると感じました。ただ、湾内であり海域が限られるため、取れる魚種の範囲が狭まったり、偏った種を取りすぎてしまったりなどの可能性も加味しなければなりませんが、一案としては大変納得できました。また、松川さんは、養殖生け簀が地域活性に役立つ可能性にも触れられていました。今回、私たちは養殖場訪問の際、養殖サーモンの餌やりも体験させていただいて、養殖現場の実態を身をもって感じることができました。松川さんは、一般の方にもそのような体験を通して少しでも水産業と関わりを持つことで、お店や食卓に並べられる水産資源の見方が変わったり興味を持ってもらえたりしたら嬉しい、と仰っていました。またそういった活動も漁業の一環であるとも仰っていました。
写真 1:サーモンの養殖生け簀 |
3. 加工工場の見学
加工工場では、函館サーモンが出荷されるまでの過程を見学しました。まず初めに、サーモンの身を成型するのですが、驚くことに、この作業のほとんどは一つ一つ人の手によって行われます。その作業というのは、身を切り、骨を取り除くものです。そしてインジェクションという、塩水を注入する工程によって味を入り浸透させやすくします。その後、真空にした上で冷凍保存して出荷の準備が整います。また時期によって出荷する魚種が変わるため、工場ではサーモンだけでなく他の魚種も取り使っています。
写真 2:加工工場内の様子 |
見学後は函館サーモンの試食をさせていただきました。函館サーモンの特徴が分かりやすいよう、トラウトサーモンとの食べ比べを行いました。下の写真の上の切り身がトラウトサーモン、下が函館サーモンです。トラウトサーモンは函館サーモンに比べかなり赤みがかっており、水分量が多いような印象でした。また、函館サーモンはかなり味がはっきりしており、濃厚な感じがしました。
写真 3:トラウトサーモン(上)と函館サーモン(下) |
4. 研修を終えて
今回の研修では、実際に養殖場へ足を運び吹雪の中餌やりをすることで、函館の地での養殖の大変さがよくわかりました。また、養殖場で働く方達のお話から、養殖業について多くの知識を得ました。