コンブ養殖の体験・見学を終えて


この度は、共創の場×CREENカリキュラムに参加し貴重な体験をさせていただきましたこと、また、本プログラムに伴う関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。


1.はじめに

今回の共創の場×CREENカリキュラムでは、養殖コンブの現場に訪問しました。コンブの養殖場の見学の他、水揚げ後の作業場における体験などをさせていただきました。水揚げ後は、コンブを種苗糸から切り離し洗浄したのち、乾燥倉庫にて乾燥するという流れです。


2.体験を通して ~気付き・発見~

作業場に到着すると、早速目にしたのは、クレーンで吊るされているとても大きなコンブの束でした。約三メートルもあるコンブは私が想像していたものよりもはるかに大きく、やはり重量もそれなりにあるそうで、万が一事故が起こった場合命を落としかねないなと、予想外なところに潜む危険に身が引き締まりました。

コンブを水揚げしたら、まずはコンブを種苗糸から切り離す作業です。コンブの根元の茎に当たる部分をなるべく種苗糸に近い位置で切り落としていきます。コンブの茎は消しゴムより少し硬い程度で、小刀でスパッと切れるのはかなり快感でした。コンブではなく種苗糸の方を持ちながら手繰り寄せるように切っていく、という漁師さんのアドバイスもいただき、漁師さんの流石の手早さに圧倒されながらも夢中で茎を切っていました。

コンブを切り離した種苗糸には、残って付着しているコンブや多種の海藻等を取り除く作業を行います。種苗糸は再生可能なので、無駄にすることなく再び使うことを目的としてこのようなことを行うのだそうです。機械でも除去できなかったものは人の手で取り除く(写真1)のですが、この作業がかなり難しく、思いがけないところに大変でかつ大切な工程があるのだと感心しました。


写真 1:種苗糸の掃除



次に行う作業は、コンブの洗浄です。コンブの茎の部分から洗浄機に入れ込む(写真2)のですが、この際コンブがねじれたまま入れてしまうとコンブが折れたり欠けたりしてしまい、売り物にならないというお話を聞きました。目の前のコンブに夢中になっていたところを、漁師さん達はいつもその先を見ているのだと感服しました。種苗糸から巨大なコンブが育ちそれを出荷するまで、多くの責任が伴うからこそ、一つ一つの工程に気遣いや丁寧さがあるのだと改めて気付かされました。


写真 2:コンブの洗浄


また、コンブを機械に入れている際にコンブに白い丸い跡のようなものがあり、その付近にはヒドラに似ている形をした小さな生物がたくさん発生していました。これはクラゲの一種で、白い丸い模様は落とすことが可能であるそうです。しかし、後に体験に行かせていただいたコンブの乾燥倉庫で、作業されていた方達に白い模様のことを伝えると、驚きの答えが返ってきました。実は、この白い模様は見栄えが悪く売れないので、のちに一枚一枚擦って落とす作業があるとのことです。かなり大変で面倒な作業であるともおっしゃっていました。見栄えだけの問題であるのにやはり売れない現状があることを再認識しました。

このような問題は他の作物の農家さんも大半が抱えていることです。不可抗力の傷や虫食いで売れなくなってしまうのは勿体ないですし、農家さんにとっても不本意なことであると思います。そういった商品を安く売ることで問題の解消に繋げる試みがありますが、消費者が「傷物だけど安いから仕方なく買う」というネガティヴな感情から商品を買うことは第二の問題になってくると思います。もちろん売れることが第一ですが、消費者が傷物の商品もポジティブな感情で手に取ることはできないのかと考えました。
例えば何の説明もなしに「傷物」と書かれたポップに安値が表示されていたら、体に害があるのか味は変わるのかといった不安からネガティヴな思考につながりかねません。そこで、何故このような傷または虫食いができてしまったのかという情報を、パッケージやポップに表示することで印象がかなり変わると思います。またそのような表示を、目を引き付けるようなデザインにすることで、逆に消費者が自ら手に取るのではないかとも考えました。


コンブの洗浄が完了したら、茎に洗濯ばさみを取り付け、乾燥倉庫に向かいます。少し力のいる作業でしたが、乾燥を担当されている方達にコツを教えていただきながら何とかやり遂げました。倉庫内の全てのフックにコンブを引っ掛け終わると、倉庫内がコンブのカーテンで埋め尽くされているようでした。(写真3)


写真 3:コンブの乾燥作業



最後にコンブの収穫の様子を見学させていただきました。漁船の上から腰を折り曲げて巨大なコンブを手繰り寄せる様子(写真4)は見ているだけで大変な作業であることが大いに伝わってきました。

写真 4:コンブの水揚げ


3.最後に

私が大学入学において水産学部を選択した理由は、水産業への興味からではなかったのですが、今回のプログラムを通して、日本の水産業の実態、特に養殖現場についてとても興味が湧きました。これからの大学の授業や実習等にも今回学んだことを活かせるように努めていきたいと思います。


最終更新日時: 2024年 07月 18日(木曜日) 10:21