正味の酸素消費量


 先の二つの例では、場所が限定的すぎたり、労力がかかりすぎます。もう少し楽に解析したいですね。海洋表層の水の酸素濃度が、大気と平衡状態に達していることが期待できるので、その平衡状態を酸素濃度の初期値 [O2]0 とします。その表層の水が大気との接触から絶たれれば、それ以降は、海水中での酸素消費により、酸素濃度が減り続けます。経過時間は不明ですが、酸素消費量を求めることができるのです。



 例えば、ある水塊が表面に存在していたときの酸素濃度を初期濃度 [O2]0 として、その水塊がある時間(T)を経て深層3000mまで移動したとします。そして我々が海洋観測を行い深層3000 mの水を採取して酸素濃度[O2 3000m]を測定しました。その水塊が時間(T)を経るうちに呼吸によって消費された酸素量は、


【呼吸によって消費された酸素量】= [O2]0 - [O3000m]


 大気中酸素濃度(一定値)と水温を決めれば、[O2]0  を計算で求めることができます。海水の水温は、大気から冷却や加熱により変化するだけなので、中深層の水の水温は、その水が表層にあったときの水温と同じです。したがって、観測により計測した水温を与えてやればよいのです。


 なお、平衡状態とは表面水と大気が十分長い時間接して見かけ上酸素の出入りがなくなり、酸素濃度の変化がなくなった状態のことです。大気と平衡にある海水中の酸素濃度は物理化学の法則により求められます。つまり、溶解度の問題ですが、大まかには冷たい水ほど多くの酸素が溶けると理解しておけばよいでしょう。大気と平衡にある海水中酸素濃度を酸素飽和濃度ともいいます。実際には塩効果もあるので実験的に求められた、酸素飽和濃度-水温-塩分の関係式を使います(次のページで計算法を紹介します)。


 表面にあったときから、観測で採取したときの時間だって、なんとか推定することもできます。例えば、毎年冬の鉛直混合で沈み込むことがわかっていて、さらに、その水が前シーズンの冬に沈み込んだことが保証されるなら、時間が決まります。毎年水が二回入れ替わる噴火湾であれば、そのような解析も可能なのです。





Last modified: Friday, 26 June 2020, 9:25 AM