DICとAlkのXYプロット
炭酸系成分と水の平衡条件、DICとAlkの定義の計6つの式を解くと、DICとAlk、pCO2、pHの4項目のうち、2項目が与えられれば、残り2項目を求めることができます。その計算方法は、「発展編」として、「特別実習科目(開講準備中)」にて学んでください。
Alk = 【HCO3-】+2【CO32-】 と簡単化したうえで、炭酸系平衡の式を展開しました。
水温20℃、塩分34一定のもと、DIC, Alkalinity (Alk) , pCO2の関係を下の図に表しました。
あるpCO2の値(250 μatm から50 μatm間隔)のとき、Alk とDIC の関係が、図中の黒実線で表されています。
例えば、大気のpCO2が400 μatm として、北大西洋の表層はアルカリ度 (Alk) が 2.3 mmol/L だから、DICは2.05 mmol/Lと計算されます。そのプロットが、矢印(a)の起点になります。図の説明は下にまとめました、
計算式は、Ocean Biogeochemical Dynamics, Sarmiento and Gruber, Princeton Univ Press, (2006) のTable8.2.1の式に従いました。図は、Figure 8.3.5 を参考にして、計算結果をもとに、AlkalinityやDICの表示範囲を変えて作図しました。
【炭酸カルシウム溶解によるプロットの移動】
北大西洋表層水には炭酸カルシウムの殻が多く含まれています(あとで説明します)。その水が深層に運ばれると、炭酸カルシウム粒子が溶解します。例えば、海水1 L中で、炭酸カルシウムが0.05 mmol溶解すると、アルカリ度が0.1 mmol/L上昇、DICは0.05 mmol/L上昇します。つまり、上の図中を、Alk : DIC = 2 : 1 の比率で動くのです。炭酸カルシウム粒子の溶解で、プロットが移動するた様子を、矢印(a) で表しました。炭酸カルシウム粒子が形成されれば、その逆をたどります。
【有機物分解によるプロットの移動】
海水1Lで有機炭素が 0.1 mmol (炭素量換算)分解すると、DICが0.1 mmol/L 上昇します。有機物中には、炭素以外に、窒素も含まれます。これらも無機化して、海水中にNO3- が再生します。アルカリ度 = 「強電解質陽イオンの合計電荷量」-「強電解質陰イオンの合計電荷量」 ですから、有機物分解にともなうNO3-の再生により、アルカリ度が低下します。
有機物中にて、C:N比= 106 : 16(レッドフィールド比)であれば、有機炭素106 mmol に対して、NO3- 16 mmol 再生します。これをアルカリ度低下とDIC増加の比率に換算すると、ΔAlk : ΔDIC = -16 : 106 になります。 しかし、レッドフィールド比をそのまま中深層の有機物分解の再生比に用いることができません。有機物の章でも説明しましたが、レッドフィールド比が表しているのは粒子状有機物中のC:N:P比です。深層での有機物分解に際しては、ΔAlk : ΔDIC = -16 : 117 の比が提唱されています。その比率が図中の矢印(b)で表されています。