炭酸カルシウム粒子の形成前後における「溶存しうるDIC濃度」の計算
①炭酸カルシウムが形成される前に、海水に溶存しうるDIC濃度を計算し
②炭酸カルシウムが形成されアルカリ度が変化したときに、溶存しうるDIC濃度を計算
①と②の差から余剰になるDIC濃度を計算します。
① 海水中で炭酸カルシムが形成される前に溶存しうるDIC濃度
炭酸カルシム(CaCO3)が形成される前の海水のアルカリ度が2.3 mmol/Lのとき、その海水に溶存しうる全炭酸濃度【DIC】を求めます。
海水中にはアルカリ度とバランスするだけの弱電解質イオンの電荷が存在します。簡単のため、アルカリ度(Alkalinity)とバランスする弱電解質イオンを、CO32-とHCO3- とします。
Alkalinity = 2【CO32-】+【HCO3-】= 2.3 mmol/L
いま求めたい【DIC】も、そのほとんどがCO32-とHCO3-なので、簡単のため、 以下のようにします。
【DIC】 = 【CO32-】+【HCO3-】
先の問題(海水に溶存する炭酸成分の割合)にて、海水のpH8では、全炭酸の約1割がCO32-、約9割がHCO3-として存在することを求めました。そこで、【DIC】= 10Cとおけば、
【CO32-】=C
【HCO3-】=9C
以上より、
アルカリ度: 2.3 mmol/L = 2【CO32-】+【HCO3-】
= 2C + 9C = 11C より、
C = 0.209 mmol/L、 【DIC】 = C + 9C = 2.09 mmol/Lこれが、海水pH8で、アルカリ度2.3 mmol/Lの海水に溶存するDIC濃度(2.09 mmol/L)の値です。
下の欄に、同じ計算手順と結果をまとめました。
② 炭酸カルシウム(CaCO3)が形成されとき、その海水に溶存しうるDIC濃度
pH8、アルカリ度2.3mmol/Lの海水1L中で炭酸カルシウム(CaCO3)が0.1 mmol形成されたとき、海水中に溶存しうるDIC濃度を計算します。
カルシウムは二価の陽イオンだから、1Lの海水中でCaCO3が0.1 mmol形成されれば、海水中のアルカリ度は0.2 mmol/L減ります。したがってアルカリ度は、2.3 - 0.2 = 2.1 mmol/L になり、
アルカリ度 2.1 mmol/L = 2【CO32-】+【HCO3-】 と表されます。
海水のpH8が変らなければ、①のケースと同様に、【CO32-】=C、【HCO3-】=9Cとおいて、
2.1 mmol/L = 2【CO32-】+【HCO3-】= 2C + 9C = 11Cより、
C = 0.191 mmol/L 【DIC】 = 1.91 mmol/L と計算されました。これは、海水pH8のまま、アルカリ度が2.1 mmol/Lになったとき、その海水に溶存しうる全炭酸の濃度が1.91 mmol/Lになることを意味します。
下の欄に、同じ計算手順と結果をまとめました。
以上、まとめると、
元々の海水(pH8, アルカリ度2.3 mmol/L)に溶存しうるDICが2.09 mmol/Lで、この海水1L中で0.01 mmolのCaCO3が形成されるとアルカリ度が2.1 mmol/Lになります。このとき溶存しうるDICは1.91 mmol/Lまで減ります。
炭酸カルシウムが形成されることにより、溶存しうるDICが0.18 mmol/L減りました。つまり、その分、海水からDICが取り除かれなければなりません。既に、CaCO3の殻が形成された時点で0.1 mmol/L相当のDICが取り除かれているので、さらに0.08 mmol/L取り除かれなければなりません。もし、この海水が大気と接しているならば、その過剰分(0.08 mmol/L)は大気へ放出されるのです。
下の欄に、同じ計算手順と結果をまとめました。
より正確には、
海水のpH変化、ホウ酸の存在も考慮する必要があります。海水1 Lで炭酸カルシウム粒子が形成・溶解しても、大気の二酸化炭素分圧が変わらないとして計算します。上の例では、pCO2 = 452 μatm 一定を想定しました。近未来ですね。上と同じだけ炭酸カルシウム粒子が形成されると、その1Lの水のpHは、8.00から7.97に変化します。炭酸カルシウム粒子の形成前後で余剰になるDICは、ホウ酸の存在とpH変化を考慮したうえで、0.174 mmol/Lと計算されます。上の簡単計算の結果0.18 mmol/Lとほとんど同じですね。(計算の詳細は、「発展編」にて)