生物による炭酸カルシウム殻の形成と二酸化炭素分圧の上昇
サンゴ礁が拡大すれば、大気中二酸化炭素が減って、温暖化は緩和されるのでしょうか?
海洋で炭酸カルシムの殻が形成されると、大気中の二酸化炭素が減りそうな気もしますが、実はその逆になります。
たしかに、サンゴが成長して炭酸カルシウム(CaCO3)粒子ができれば、海水中の全炭酸(DIC)は減ります。しかし、pCO2は上昇するのです。
そのカラクリを理解するには、海水のアルカリ度の変化から考えなくてはなりません。
Photo by David Mark (Pixabay)
ここで、アルカリ度の定義を再び書き出します。
【アルカリ度】=(【Na+】+【K+】+2【Mg2+】+2【Ca2+】)
-(【Cl-】+【Br-】+2【SO42-】+【NO3-】)
アルカリ度を決める強電解質イオン成分のうち、生物の作用で変動しうるのはどれでしょうか? まず効果が大きそうなのがCa2+です。円石藻やサンゴ、貝類、有孔虫は炭酸カルシウム(CaCO3)の殻をもちます。これらの生物が成長すると、海水中のCa2+が吸収されてアルカリ度が下がります。これらの生物が死に、殻成分が海水中に溶出すればアルカリ度は上がります。このアルカリ度の変化を埋め合わせるだけ、弱電解質の陰イオン(炭酸系イオン)の電荷が増えたり、減ったりするのです。
大事なポイントは、
① 海水のpHでは、炭酸系の弱電解質イオンの大部分がHCO3-であること
③ 今知りたいのは、H2CO3濃度(つまり、大気平衡にあるpCO2分圧)であること
です。
最終更新日時: 2020年 05月 17日(日曜日) 08:23