溶解平衡濃度

 海洋の生物は二酸化炭素を吸収と放出、有機炭素を運ぶ役割を果たします。海洋化学や生物学の立場では、その生物による作用がどれくらいなのかを知りたいです。まずは、生物の作用がない場合の二酸化炭素分布を考えてみます。そして、実際の海洋観測による分布と比べて、その差分を生物作用によるものとするのです。

生物の作用がない場合のDIC濃度分布(大気との溶解平衡濃度)

 大気中のCO2は、水温が低いほどよく溶けます。したがって、CO2の溶解平衡濃度は水温と大気中CO2分圧(pCO2)が決めます(下の図の決定要因の矢印を参照)。海水中でCO2は即座に炭酸(H2CO3)、炭酸水素イオン(HCO3-)、炭酸イオン(CO32-)に解離します。この3成分の合計を全炭酸(Dissolved Inorganic Carbonate; DIC)といいます。海水のアルカリ度(あとで説明)を補うように、炭酸系イオンが溶存します。したがって、大気と十分接触して平衡状態になった海水のDIC濃度は、大気のCO2分圧、水温、アルカリ度で決まります。低水温、高CO2分圧、高アルカリ度ほど、大気平衡のDIC濃度は高くなります。大気CO2分圧を一定値(産業革命前の280 ppm)、アルカリ度を与えて(※)、水温の鉛直分布(観測値の平均)より、大気と平衡にあったときのDIC濃度の鉛直分布を計算すると、下の図の薄青色(計算値)のように表されます。これは、海洋の全炭酸(二酸化炭素)が生物の影響を受けていないことを想定した濃度になります。計算方法は、あとで詳しく説明します。


※アルカリ度は、生物作用で変化します。生物作用によるアルカリ度の変化を除外するように、北太平洋表面のアルカリ度を採用しました。計算方法は、Sarmiento and Gruber, Ocean Biogeochemical Dynamics, Princeton Univ Press, 2006, Table 8.2.1, 8.2.2に基づいています。


 薄青色で示した部分(溶解平衡濃度)は、鉛直一様にも見えますが、下の拡大図を見ると、表層で濃度が低く、表層直下から急に高くなり、深層では高濃度で一定の様子がみられます。なぜ、このような分布になるのか、考えてみてください。



 

Diperbaharui kali terakhir: Jumaat, 22 Mei 2020, 7:57