大陸の成長が始まったころ(約30億年前)

 上の絵では、およそ6億年前までに大気中二酸化炭素が0.003 (atm) まで減少した様子を表しています。それでも、現在の約十倍もあります。


 顕生代(5億4千万年前)になってから、陸上で植物が反映するようになり、一部の炭素は化石(石炭や石油)として地下に隔離されました。それで、現在の大気中二酸化炭素レベルに近づいてゆきました。(ただし、大気中二酸化炭素が減った主な理由として化石(石炭や石油)を考えるのは、海洋が保持する炭素量が顕生代初期と現在で変わらないという前提があります)

 地球表層に残されたごく僅かな炭素が、現在、移動可能な炭素として大気、海洋、陸上植生に分配されています。過去、数億~数千万年の時間スケールでの気候変動は、地殻中の炭酸塩鉱物から炭素が表層に供給される量(火山や風化など)と、海洋から炭酸塩粒子として除去、地殻に固定される量のバランスで決まります。現在の海洋では、炭酸塩粒子ができるのはほとんどが生物作用と考えられています。


(上の図のデータは、IPCC report chapter 3, figure 3.1  から引用しました。地殻中の炭酸塩鉱物の量は、北野, 地球化学, (1997)のTable 2の値を参考にして107~108 Pg C という値を記しました。なお、上部マントルには108 PgCほどあるそうです。本コースでは、情報を整理しきれていないので、あいまいな記述を含んでいます。マントルの炭素は炭酸塩岩ではないでしょうから、地球誕生当初に隕石として供給された炭素質コンドライトの名残がマントルにあると思われます。炭素質コンドライトが集積して地球に炭素をもたらしました)


 人間が生まれる前までは、炭酸塩岩の風化や火山による二酸化炭素の放出と、海洋生物による炭酸カルシウム粒子の堆積と埋没が釣り合っていました。しかし、上の図で示しているように、現在は人間がそのバランスを大きく崩しているのです。近年、地球温暖化を引き起こす要因として人為的な二酸化炭素の排出が注目されています。過去百年間、人間により放出された二酸化炭素が全て大気に蓄積していたら、大気中二酸化炭素は倍増して、1000 ppm目前だったかもしれません。幸いに、まだ380 - 400 ppmに留まってくれています。人為的な二酸化炭素の放出量は、化石燃料の流通量から比較的容易に推定できますが、放出された二酸化炭素が地球表層の何処に分配されるのかを知るのは容易ではありません。炭素を一時的に貯蔵するレザーバーとしては、海洋が一番大きいので、海洋が人為起源の二酸化炭素を吸収していることが想像できます。海洋学の立場としては、海洋に隔離される二酸化炭素の量は如何ほどか、という問いに答えなくてはなりません。

 その問いに向き合うには、海水が二酸化炭素を吸収する仕組みを理解して、その計算ができなくてはなりません。それを学んでもらいます。


参考文献:「地球環境46億年の大変動史, 田近英一著, 化学同人, 2009」「地球表層環境の進化―先カンブリア時代から近未来まで, 川幡穂高著, 東京大学出版会, 2011」「地球環境の事典, 吉崎正憲, 野田彰ほか編集, 朝倉書店, 2013」「地球環境における炭酸塩物質に関する研究, 北野, 地球化学, 31, 211-226, 1997」 などを読んでまとめました。


書籍紹介

地球環境46億年の大変動史, 田近英一著, 化学同人, 2009」 地球の進化の歴史を読み易く書かれている。地球の進化で海は決定的な役割を果たしてきた。現代の海、将来の海、地球環境、地球温暖化とは何か、これらを理解するには、過去に学ぶことが大事である。


마지막 수정됨: 금요일, 26 6월 2020, 6:47 AM