いよいよ明日はカナックを発つ日だ,帰国に向けてサンプルを処理したり,カナックに置いていくデポ品を整理してコンテナ倉庫に戻したりと,ゲストハウスの中は少し慌ただしい。

 アザラシに衛星発信機を取り付けに,ボートで何日か出ていたアザラシチームがゲストハウスに戻ってきた。残念ながらターゲットにしていたアゴヒゲアザラシに発信機を取り付けることはできなかったものの,ワモンアザラシ三頭に発信機を取り付けることができたということだ。ターゲットのアザラシはアザラシ用の刺し網で捕獲し,専用の接着剤で背中に発信機を取り付けるそうだ。発信機はリアルタイムでデータを送信し,基本的には使い捨てとなる。アザラシの捕獲から発信機の取付けには,グリーンランド天然資源研究所で主にアザラシの研究と管理に取り組んでいるAqqaluさんが同行していた。Sさんが撮影した調査の様子を見せてもらったが,アザラシは捕獲すると案外おとなしくしていた。

 荷物のパッキングをおおかた終えたころ,なんと生活水を貯めておくタンクの水がなくなったということで,皆で鍋に川の水を汲みに行った。

 ここで,カナックの水事情を説明すると,基本的に上下水道はなく,各家に設置された貯水タンクに給水車が水を運んでくる。下水道もないため,トイレの便器には黒い袋が設置され,中身が溜まったところでそれを交換し,ごみとして捨てる。ゲストハウスの隣には氷河から流れ出てきたきれいな水があるが,その流れは気温が上昇し氷河が解けることによってできるものなので,冬には水がなくなる。そのため,各家にタンクが設置されているということであった。このゲストハウスは本来10人が寝泊まりできるように設計されており(ベッドの数が10のため),この人数を超えて生活を行ったために水切れになったと思われる。滞在中,水が足りなくなりそうになることはあったが,水がなくなるのはこれが初めてであった。


Terakhir diubah: Senin, 26 Mei 2025, 09:11