日報8月14日
カナック博物館の前まで向かったが,開館時間は12時~16時まで閉館していたため一度ゲストハウスに戻った。スーパーに行った面々が返ってくるのを待ってからお昼にピザを食べ,その後博物館に向かった。
カナック博物館はゲストハウスから向かうと入り口と看板が向こう側にあるためわかりにくくなっていた。玄関前には大砲?のようなものと石碑があった。中に入ると中には外国人観光客らしき二人と,関係者らしき男性がいた。展示品としては,石でできた矢じりや動物の骨や牙でできたアクセサリーなどと,犬ぞりに関連したものが置いてあった。解説の男性が,犬橇と犬をつなぐ紐にはアザラシの毛皮を細く切って使われていたことや,皮で作られたカヤックは,乗る人の体重や身長に合わせてオーダーメイドで作られること,イッカクを突くもりのロープの元には刺したイッカクが沈まないようにアザラシの毛皮で作った“浮き”を使用していたことなどを解説してくれた。どこから来たのか聞かれたので日本から来たことを伝えると,彼は日本に行ってみたいが旅費が高すぎる,と嘆いていた。
入館料は40DKK(約800円)であったが,持ち合わせが500DKK札(約1万円)しかなく,その旨を伝えるとスーパーマーケットの横の役場で払えと言われた。役場に向かうと,英語の話せる窓口の人から(おそらく)博物館担当者のところに案内され,入館料を払おうとしたが,その人は英語をほとんど話せなかった。非常に感じの良い人で,どこから来たの?グーグル翻訳を使うからちょっと待っていて!と言われしばし待つと,“まず店で両替してから払うように”ということであった。そこで向かいのスーパーマーケッへ行きお金を用意してから再びその人を訪れると,なんとグーグル翻訳で,日本語で,“ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした”という言葉を機械音声で言われて,驚いた。
ゲストハウスに戻ると,海鳥チームが採集したLittle Aukのサンプル処理を行っていた。海鳥目視観察の際は記録係として野帳への記入を行っていたためじっくりと観察することができなかったLittle Aukを,間近に見ることができた。サンプルの計測として,①くちばしの長さ,②くちばしの高さ,③翼の長さ,④足の骨の長さ,⑤卵を温めるために羽毛がはげた部分の大きさ,⑥舌の下の袋にカイアシが入っているかどうか,などの測定項目を記録していた。さらに,翼,背中,腹側の羽毛,など体の様々な場所から羽根のサンプルを採集していた。様々な場所から採集する理由は,鳥の羽根は全身が一度に生え変わるわけではなく,少しずつ生え変わるため,羽根(部位)ごとに生えてからの時間が異なり,それぞれで安定同位体と水銀の分析を行う必要があるためとのことだ。実際に測定を行っている様子を見学させていただいたが,いくつかの個体の舌の下の袋にカイアシが収納されている様子を見ることができた。
この日の夕食は,ジャコウウシ(モスコック)だった。ジャコウウシの肉は(部位によるとは思われるが)日本で食べる牛肉のように脂が多いということはなくとてもおいしかった。ジャコウウシと共に,イッカクの生皮と脂身でできたmattakも食べた。mattakは皮下脂肪をある程度切り落としてから薄切りにして食べる。ほんの少し血と脂の香りがするがほとんど味がない。触感は,皮の部分はシャキくにょとして,脂肪の部分は固くコリコリとして嚙み切れない。わさび醤油が合う。
夕食を食べ終わるころ,村にかかっていた霧が晴れ太陽が出てきて,村の高台にあるゲストハウスからは雲海のように霧が広がる様子が見られた。ゲストハウス裏手の山に登ればもっと綺麗な景色が見られるに違いない,と思いケルンのある場所まで登ってみれば,ところどころ雲海の中に見える氷山の頭と,そのさらに向こうに見える対岸の山に太陽が当たりオレンジ色になっている様子が見られた。
(撮影:大谷)