上の論文の内容を一部紹介
1980年代に北極の煙霧(Arctic haze)が人為的な汚染により引き起こされることが明らかになり,さらに北極の対流圏オゾンの消失にも関連していることがわかってきました。北極の対流圏オゾンの消失に係る成分として海洋起源の臭素をはじめとしたハロゲンが考えられたことから、海洋起源の臭素に注目が集まったのです。
Arctic hazeとオゾン消失の関連を明らかにするため,1980年代中頃から国際研究プロジェクト“Polar Sunrise Experiment”が実施されました。その結果,春先のオゾン消失は,フィルターで捕捉される臭素(主にHBr)が増える現象と一致して起こることが明らかになりました。(下の図で、フィルターで捕捉される臭素を f-Brとしています)
Barrie, L. A., den Hartog, G., and Bottenheim, J. W. (1989) Anthropogenic aerosols and gases in the lower troposphere at Alert Canada in April 1986, Journal of Atmospheric Chemistry. 9, 101-127.
臭素原子(Br)がオゾンを触媒的に破壊する過程においてHBrが生成されるので,オゾン消失とBr増加が一致するのです。北極では春季(3 – 4月)に対流圏大気でブロモホルム(トリブロモメタン;CHBr3)が高濃度で見つかっていたので(Berg et al., 1984),臭素原子を供給する化合物としてブロモホルムに焦点があてられたのです。
(そのあとの話しは、論文を参照してください)
最終更新日時: 2020年 05月 29日(金曜日) 14:03