【粒子の粒径(サイズ)範囲の区分】

 粒子の直径が0.01 μm以下は粒子核領域(Nuclei mode)、0.1 μm以下は凝集領域(coagulation mode) 0.1~1 μmを、累積領域,(accumulation mode)、1 μm 以上を粗大領域(coarse mode)と呼びます。


【粒子の生成と成長】

 凝集成長が進むのは、分子拡散によるためです。空気分子が微粒子に衝突すると、微粒子が高速で動きます。高速で動く微粒子同士が衝突して凝集成長が起こるのです。ある程度まで微粒子が大きくなると、空気分子が衝突しても微動だにしません。すると、凝集成長をしなくなります。凝集成長をしないサイズ領域(0.1~1 μm)に粒子が蓄積するので、累積領域と呼ぶのです。累積領域より大きくなると、粒子は重力落下して、大気から除去されるようになります。そのサイズ(1 μm以上)を粗大領域と呼びます。


 凝集領域(0.1 μm以下)の粒子は、気流がフィルターを通過する僅かな時間に、粒子の分子拡散運動により粒子がフィルター繊維に衝突します。粒子が巨大な繊維表面に衝突したら100%補足されると考えます。したがって、目の粗いフィルターでも凝集領域(0.1 μm以下)の粒子は捕集されやすいです。粗大領域(1 μm以上)は、気流中を移動する際の慣性力が大きいのが特徴です。フィルターを通過する途中に気流から外れてフィルター繊維に慣性衝突します。そのため、粗大領域の粒子は目の粗いフィルターでも捕集されやすいです。ちょうど、その間、0.1~1.0 μmの累積領域の粒子は、空気フィルターに捕集されにくいのです。このサイズのウイルス粒子が浮遊していたら、厄介です。


【マスクについての私的考察】

 ウイルス単体のサイズは0.1~1.0 μmですから、空気中をウイルスが単体で浮遊していると、普通のガーゼマスクでは捕集されにくいのです。ただし、空気中でウイルスが単体で浮遊しているのか?が大事なポイントです。 重力落下をするような粗大粒子(飛沫など)は、目の粗いマスク(ガーゼマスク)でも高い捕集効率が期待できます。ウイルス単体のサイズ(累積領域)では、ガーゼマスクの捕集効率は著しく低くなります。

 私は、ウイルス学は全くの専門外ですが、空気中にウイルスが単体でまき散らされる状況って、どういうこと?と興味を持っています。飛沫とともに発生するとすれば、細かな飛沫の水分が蒸発して小さくなることでしょう。蒸発具合は、相対湿度に依存します。カラカラに乾燥した空気ほど、飛沫微粒子は急速に小さくなって、空気中を長時間浮遊、かつマスクを通り抜けやすくなるのです。”部屋を湿らせた方がいい”という理由の一つは、このような効果も含まれると思われます。

 エアロゾル科学は、公衆衛生学から発展してきた歴史があります。昔の医学者の名前(Andersenさん)が付けられたエアロゾル捕集器(アンダーセンサンプラー)があって、私も愛用した道具です。さて、〇×マスクは、感染防止に有効だ!とか、意味がない!とか、いろいろ報道されます。そのような情報に惑わされる前に、誰が、どのような実験をして、どのような状況下において、その判断を下したのかを読み解く必要があるでしょう。ガーゼ繊維を4重にしても、累積領域の粒子は80%以上通り抜けてしまう、という論文がありました(後日、引用元を記します)。

 ちなみに、水中の粒子を捕集するフィルター機構は、空気のフィルター機構と大きく異なります。水中の粒子がフィルター繊維に衝突して捕捉されるのではありません。水中の粒子は、フィルターの目穴に詰まって捕捉されます。水中の粒子フィルターでは、フィルター孔径よりも大きな粒子が捕集されます。これは当たり前に思いますよね。いっぽう、空気フィルターでは、フィルター孔径よりも大きな粒子は当然捕集されますが、孔径よりも小さな粒子でも捕集されます。先に述べたように、凝集領域の小さな粒子であれば、分子拡散で繊維に衝突する確率が高いからです。その捕集効率は、粒子サイズ、フィルター孔径、繊維層の厚さや、吸引する流速に依存するので、捕集効率を調べるのは難しいことなのです。

 私の初めの恩師である故中江先生は、「空気清浄学会」の会長でした。空気フィルターの学会ですね。そんな学会があるのですよ。私は、卒業研究~修士研究まで、そんな研究室にいたのです。




마지막 수정됨: 목요일, 25 6월 2020, 6:24 PM