大気中には、数十ナノメートルから、数十マイクロメートルまでの微粒子が浮遊しています。大気中を浮遊する微粒子のことを、「大気エアロゾル粒子」(略して、エアロゾル)といいます。とくにサイズが小さなエアロゾルを、微小領域(fine mode: 0.01~1 μm ※)の微粒子といいます。まず、大気中の凝縮性分子がくっついて粒子核をつくり、さらに粒子核が凝集して成長すると微小領域の微粒子になります。微小領域の微粒子も、はじめのうちは凝集成長してゆきます(※※)。0.05 or 0.1 μmまで凝集成長した粒子は、それ以上、なかなか凝集成長できなくなります。このサイズまで成長すると、雲の中で雲粒に成長することができます。そのあとは、雲粒同士が衝突を繰り返すような、雲過程を経て雲粒が大きくなります。雲粒が雨にならず、乾燥すればエアロゾル粒子に戻ります。雲粒同士が衝突しているので、元の微粒子(エアロゾル)よりも大きくなっています。このプロセスによって、累積領域(次のページで捕捉説明)のエアロゾル粒子が成長するのです。

 海洋の大気で代表的な凝縮性分子は、硫酸分子、水分子、アンモニア分子があります(他に、硝酸、塩酸、有機物、、、たくさんあります)。硫酸の起源としては、海洋植物由来のジメチルサルファイド(DMS)や、火山ガスや石炭燃焼の二酸化硫黄があります。

 大気中に凝縮性分子が沢山生成されると、粒子核が急激に生まれます。これを粒子核形成イベントと呼びます。粒子核は急速に凝集成長をして、微小領域の微粒子を生み出します。微小領域の微粒子は、凝集成長を続けて100 nmくらいのサイズまで成長します。また、相対湿度に応じて、大気中の水分を吸収・蒸発させます。





下に、各段階の分子や粒子のサイズを記して、図をまとめました。



 なお、凝縮性分子の生成量が少ないと、粒子核形成は起こりません。中途半端な量で生成された凝縮性分子は、大気中にすでに存在する微粒子にくっつくだけです。この場合、大気中の微粒子の数は増えません。雲凝結核(CCN)の個数増加にも寄与しないのです。これが、エアロゾルと雲粒研究の肝になります。



 水溶性の微粒子は、大気中の相対湿度と微粒子溶液の濃さに応じて水分子を吸収します。水分子を吸収すれば、その微粒子の水溶性成分(硫酸やアンモニア)は薄まります。微粒子が水で薄まると、あるところで水分子の吸収がストップします。下の図の(A)で表した状態です。元々の微粒子に多くの水溶性成分が含まれていれば、より多くの水分子を吸収して、サイズが大きくなります(下の図の(B)で表す状態です)。大気が上昇気流により過飽和状態になると、(B)の微粒子は、際限なく水分子を吸収してサイズを大きくすることができます。それが雲粒です。雲粒になれる微粒子の数の増減が、気候を理解するうえで大事なポイントになります。



 なぜ、過飽和になると、水溶性微粒子は水分子を吸収し続けられるのか。これは、水溶性微粒子の溶質効果と曲率効果で説明できます。これについては、別の機会(この内容を、授業1回分に格上げするとき)に説明します。


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 捕捉説明にしては詳細まで記しすぎた感があります、、オンライン教材のいいところでもありますが、どこまで学ぶかは、皆さんが取捨選択してください。






最後修改: 2020年 05月 29日(週五) 13:54