DMSは比較的反応性の高い有機硫黄ガスで、大気中に放出されると短時間(数日くらい)で酸化反応を受けて二酸化硫黄(SO2)になります。大気中のSO2はさらに酸化されて硫酸(H2SO4)になり、水やアンモニア、塩化ナトリウムと反応して硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムの微粒子になります。硫酸塩の微粒子は、凝集成長を繰り返しながら、雲粒の核(タネ)になることができます。海洋植物から放出されたDMSが雲のタネになることから、海洋・気象・気候の関係が注目されています。

 雲粒のタネになる成分は他にも、海塩粒子や人為起源の硫酸塩粒子、硝酸塩、、、など数多くあります。海洋性大気の雲に限れば、海洋植物から放出されるDMSに由来する硫酸塩の微粒子が最重要と考えられます。DMS由来の雲粒は気候にも大きな影響を与える可能性があります。地球が温暖化すればDMSが増えて、温暖化を緩和する機能が働くことを述べたCLAW仮説が提唱されました。

つまり、

① 地球が温暖化すると、② 海洋植物による光合成が活発になる 

③ 海洋植物が増えると、海洋植物によるDMS生成が増えて、大気へのDMS放出量が増える

④ 大気へのDMS放出が増えると、DMS由来の二酸化硫黄と硫酸塩微粒子が増える。

⑤ DMS由来の硫酸塩微粒子が増えると、雲粒に成長する粒子核(雲核)の数が増える

⑥ 雲核の数が増えれば、雲粒一つ一つのサイズが小さくなる

⑦ 雲粒一つ一つのサイズが小さくなると、雲が太陽光を反射する率(アルベド)が上昇する。
 雨として降る頻度が減るので、雲の滞留時間が増える

⑧ 雲のアルベド上昇と、雲の滞留時間が増えることで、地表面付近を寒冷化させる効果が生まれる。

つまり、①(地球の温暖化)→⑧(寒冷化) の効果が生まれる。これを、地球温暖化に対する、負のフィードバック効果といいます。CLAW仮説とは、この①→②→・・→⑧ の一連のことが起こることで、気候を緩和する機能を地球自らが備えていることを提唱したものです。




 1987年にCLAW仮説が提唱されてから、世界中の気候学者、海洋学者、大気科学者は、CLAW仮説を検証する研究にのめり込みました。それにより、大気や海洋学が大きく進歩しました。次のページでCLAW仮説が否定された論文を紹介します。




最終更新日時: 2020年 05月 29日(金曜日) 13:40