CLAW仮説を説明した図をもう一度出します。絵の右端に硫化カルボニルもついでに記しておきました。




 上の図では、CLAW仮説では扱ってない、硫化カルボニル(COS)の役割も追記しています。COSは、対流圏では分解せず(※)、成層圏に到達します。成層圏での強い紫外線でCOSは分解して、酸化反応を経て硫酸粒子になります。成層圏の雲粒を作る核を供給する役割を果たす有機硫黄ガスです。成層圏で雲が増えると、地表面付近の温度を上昇させる効果が生まれます。

※ 対流圏に降り注ぐUV-Aごときでは分解しません。そのため対流圏では平均500 pptを示します。大気中では安定なCOSですが、海水中では加水分解して数日以内で半減します。面白いですね。海洋表層では、昼間、メタンチオールの光分解によりCOSが発生して、夜間(昼間も)は加水分解によりCOSが分解します。そのため、表層海水ではCOS濃度の日周変化が明瞭に見られるのです。

 1990年代初頭までは、COSの全球的な発生源は不明でしたが、近年、海洋由来が最重要であることがわかってきました。ちなみに、COSはCO2の酸素(O)がSに変わっただけで、構造的にCO2に似ています。そのため、陸上植物は光合成時にCO2と間違ってCOSも吸収します。いっぽう、呼吸ではCOSは発せられないので、陸上での光合成量を調べる際のマーカーとして用いられることもあります


参考文献 Investigations into the tropospheric cycle of COS : atmospheric distribution, air-sea and air-vegetation exchanges, Xiaobin Xu, 2001 (博士論文):海洋と大気のCOSとCS2をとても詳しく説明、研究されています。



最后修改: 2020年05月29日 星期五 13:26