海洋から大気への運び屋:有機ガス

 海洋植物は海水に含まれるC, H, O, N, S, Ca, Mg, Si, P, Cl, Br, I, Fe, Mn, Zn,などの親生物元素を取り込んで有機物を作っています。有機物が海洋の物質循環の中心的役割を担っているのですが、これは炭素が4個もの共有結合を持ち様々な元素と結合する“キャリヤー”として働いていることを意味します。

 有機物のうち、低分子で疎水性を有すると、海洋から大気へ放出されます。そのような有機物のことを、揮発性有機化合物、Volatile Organic Compound, VOCとよびます。小難しい名前なので、簡単に有機ガスと呼べばいいでしょう。有機ガスは大気への物質移動のキャリヤーとして大事です。

 例えば、有機硫黄ガスは大気へ硫黄を運ぶ重要なキャリヤーです。硫黄に二つのメチル基がついた、ジメチルサルファイド(Dimethyl sulfide (DMS): CH3SCH3)が有名です。海洋の有機ガスで最もメジャーな成分です。

 炭化水素もあります。植物の光合成時に発生するイソプレン(C5H8)が注目されています。植物は、イソプレンを合成して、カロテンを作ってゆきます。陸上植物が多くのイソプレンを放出するのですが、大気へ放出される有機ガスの半分くらいを占めます。

 有機ハロゲン化合物(ハロカーボン)の塩化メチルCH3Cl、トリブロモメタンCHBr3などがあります。これらは、自然起源のハロカーボンで大気の対流圏や成層圏のオゾンを触媒的に反応します。成層圏のオゾン破壊については、人為起源ハロカーボンのフロン類が成層圏オゾンを破壊することで注目されています。

 硝酸メチルや硝酸エチルなどの、有機窒素ガスもあります。こちらは、研究があまり進んでいないところです。




 有機ガスの量について説明しましょう。海洋表層水中の溶存有機炭素(DOC)の濃度60 – 80 μmol L-1に対して、有機ガスは1 – 100 nmol L-1(有機ガス分子のモル濃度)ほどです。有機ガスの濃度はDOC全体の1/1000以下です。



Last modified: Friday, 29 May 2020, 1:30 PM