Dennis A. Hansell & Craig A. Carlson, Nature, (1998)をはじめ、Hansellらによって、海洋のDOC分布の詳細が報告されました。そのカラーコンター図を示します。


下の図Aは、海洋表層(30 m)の溶存有機炭素(DOC)の水平分布図です。熱帯や亜熱帯で高く、亜寒帯(特に南大洋)で低いことがわかります。亜寒帯で低いといっても、カラースケールの最小目盛りがゼロではなく40(くらい)であることに注意してください。海氷表層でも、海水中のDOC濃度がゼロに近づくことはありません。暖かい海でDOC濃度が高いのは、表層で生産された有機物粒子が速やかに分解され溶存態になるためと思われます。北極海でDOC濃度が高い様子がみられます。下の図で表示されているのは、北極海でも陸棚域に限られています。北極海の陸棚域は生物生産性が高いこと、陸棚の海底面から供給されること、河川水から陸域の有機物が流入するためと考えられます。


海洋の溶存有機炭素(DOC)の水平分布図.A: 海洋表層(30 m)、図B: 海洋深層(3000 m).丸印が海洋観測により採水してDOC濃度を測定した場所です。

引用情報: Hansell et al., Oceanography, 22(4) 202-211 (2009) のFigure 1を引用しました。この雑誌は、 Creative Commons Attribution 4.0 International License を受けています。


上図Bは、深層(3000 m)におけるDOC濃度の分布です。深層循環のスタートである北大西洋高緯度域でDOC濃度が高く、一番低いのは北太平洋高緯度域です。深層循環の順にしたがって、DOC濃度が低くなる様子がわかります。この図のカラースケールの最小目盛りはゼロではなく、37(くらい)であることに注意してください。海洋深層でもDOC濃度がゼロになることはありません。



最終更新日時: 2023年 07月 19日(水曜日) 08:59