海水中の有機炭素濃度の測定法
DOM(溶存有機物)の重量濃度を知るには、化学処理や熱処理により海水から無機物を分別してから、残渣物(有機物)の重量を測る方法があります。重量測定は単純そうですが、水分を除く必要があること、フィルター重量に比べて粒子重量がかなり小さいので、精度よく測定することが困難です。かなり面倒くさい作業になります。
DOC濃度(溶存有機物の炭素濃度)を調べるのであれば、水試料から無機炭酸を取り除いて、有機物を燃焼して発生した二酸化炭素濃度を測定すればよいです。。白金触媒を使って高温燃焼することで、DOC濃度測定の精度が向上して、近年、海洋のDOC分布が明らかになってきました。
下に、海水中の炭素成分をフィルター処理と化学処理をしながら測定する方法を示します。この手順はよく理解しておいてください。
【溶存有機炭素の計測手順】
① 海水をろ過して、粒子態と溶存態を分けます。
炭素成分を計測するので、フィルターの材質には炭素を含まないものを選びます。石英ガラス繊維のフィルター(Glass Fiber Filter/ GF filter)が使われます。海水中の溶存有機炭素濃度は低いので、使用前のフィルターを500℃で加熱して炭素の汚染を除いておきます。
② 溶存態に酸を添加して、炭酸成分を除きます(炭酸成分を測るときは、炭酸発生量を測定)
塩酸やリン酸が使われます。海水が酸性になれば、海水中で解離平衡になっている、炭酸イオン、炭酸水素イオンは全て炭酸(H2CO3)になります。この試料水に高純度窒素ガスをバブリングすることで、炭酸が二酸化炭素として除かれます。海水中の炭酸成分を計測するときは、この二酸化炭素量を計測します。
③ 溶存態を高速加熱して有機炭素を燃焼します。
白金触媒を使うことで、高速燃焼が可能になり、海水の溶存有機炭素の高精度測定が可能になりました。日本の島津製作所による技術です。
④ 燃焼して発生した二酸化炭素の濃度を測定します