ちなみに、フワフワ漂っていた巨大な有機物粒子に、細かな鉱物粒子がたくさん付着することにより、巨大な有機物粒子を高密度化させて沈降を促す効果も提唱されている。鉱物粒子が重り(=バラスト)の働きをしているので、これをバラスト効果といいます。

(海事用語で「バラスト」というのがあります。船が浮きすぎないように、重りとして、タンクにバラスト(重り)水を入れるのです)

 どれくらいの数の鉱物粒子が付着すると、どれくらいのバラスト効果が生まれるか、簡単な式で導けるはずです。ストークス沈降の式さえ知っておけば、海洋の物質輸送について、簡単な数値シミュレーションができて、興味が広がります。各自試算してみましょう。




 なぜ、海洋学でバラスト効果が注目されているかというと、フワフワ漂う植物プランクトンが何故沈降しうるのか?、が謎だからです。珪藻類は、昆布のネバネバ様の多糖類を放出します。このネバネバ物質が海水中には沢山浮遊していて、これを透明細胞外重合粒子(Transparent Expolymer Particle=TEP)と呼んでいます。この状態が保たれれば、ネバネバ珪藻はずっと海洋表層に漂っています。しかし、実際には珪藻は沈降しています。個別の鉱物粒子では沈降速度を持ちえませんが、実際には、相当な速度で沈降しています。

 また、TEPに様々な微粒子が付着して巨大化した物(珪藻細胞も含むと思われる)が一斉に沈降すると、マリンスノーになることも想像されています。


TEP(Transparent Exopolymer Particle):透明細胞外重合粒子は酸性多糖類でできています。以下で説明するように、藻類はTEPを産生して身にまとい、脱ぎ捨てていると考えられます。

酸性多糖類:藻類の多くは、酸性多糖類を産生しています。昆布の表面のネバネバです。なぜ、ネバネバをだすのでしょうか。いくつか説が考えられています。一つは、外界からの保護があります。海水には、病原体となるウイルスやバクテリアが沢山います。それらの体内への侵入を防ぎます。定期的にネバネバを脱ぎ捨てれば、体をキレイに保つことができます。もう一つが、海水中の微粒子をくっつけて、栄養を吸収しやすくするためです。これは、栄養に乏しい外洋の植物プランクトンに有効な戦略だと思います。ただし、詳しいことはわかっていません。


最終更新日時: 2020年 05月 29日(金曜日) 10:12