ある観測ライン(鉛直方向や水平方向)で測定した海水の水温(Temperature)と塩分(Salinity)X-Yプロットした図を、T-Sダイヤグラムと呼びます。

 水塊毎に特徴的なプロットがみられます。これは水塊を区分したり、水塊の移動や混合具合を調べるのに便利なので、日本周辺のT-Sダイヤグラムを例に説明するので、北西太平洋の亜熱帯と亜寒帯、その移行領域の特徴を理解しましょう。


日本周辺の代表的な二つの海流は、親潮と黒潮です。両方とも西岸境界流です。

親潮は北太平洋亜寒帯海域に起源をもち、亜寒帯の西側(西岸)を北から南へ流れ、低温で低塩分な亜寒帯の水を運びます。

黒潮は北太平洋亜熱帯海域に起源をもち、亜熱帯の西側(西岸)を南から北へ流れ、高温で高塩分な亜熱帯の水を運びます。


 親潮と黒潮の両海流が直接ぶつかることはなく、両海流から派生した渦が中間域でぶつかり混合する。その中間域を混合域もしくは移行領域と呼びます。

 北西太平洋の亜寒帯域(青)、移行領域(緑)、亜熱帯域(赤)の各ステーション(下図()の丸印)で海洋観測を行い、表面から深層までの水温と塩分をT-Sダイヤグラムにプロットしました(下図())。


 右図の黒曲線は水温と塩分から計算される等密度ラインです。

 例えば25.0σと26.0σは、密度1.025 g cm-31.026 g cm-3を意味します。(先に定義したように、以降、海水密度をσに換算して表記します)

 密度の小さい(軽い)水が表面に浮いていて、密度の大きい(重い)水が深い方に沈んでいるのだから、おおまかには、(左)上が表面で右下方向が深層にプロットされます。

 このT-Sダイヤグラムをみると、各海域(亜寒帯、移行領域、亜熱帯)の表層のT-Sはそれぞれ固有の範囲にプロットされていますが、深層に向かうと右下方向(高密度側)でプロットが収束しています。この、右下に収束しているのが北太平洋深層水です。深層水の起源は南極底層水(元々は北大西洋深層水)にあり、これが変遷して太平洋深層で分厚い層をなし、水平的に広がっています。

 したがって、北太平洋深層水のT-S範囲は、亜熱帯でも亜寒帯でもほぼ同じです。



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北太平洋のTSダイアグラム(まとめ)

TSダイアグラム

 左上側(低塩分・高水温):表面方向

 右下側(高塩分・低水温):海底方向

北太平洋

 左上側のプロット(表層)

   高温・高塩分:亜熱帯

   低温・低塩分:亜寒帯

   その中間  :移行領域

 右下側のプロット(深層)

   低温・高塩分:北太平洋深層水 
   (異なる海域でも同じTSに収束)

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Last modified: Friday, 1 May 2020, 8:23 AM