海洋学のえん  塩(えん)という化学的な意味は水に溶けて正と負のイオン成分になる化合物のことですが、海洋学でいう塩分の“えん”とは少し意味合いが違います。海洋学では海水の密度を計算するときに必要なパラメタとして塩分を用います。海水の密度を決めるのは、水に溶けているイオン成分に加えて、微量ですがコロイド粒子や溶存気体もあります。したがって、海水を蒸発させて残った残渣物の量、水と一緒に蒸発した二酸化炭素の量を合わせた重量を“塩分:Salinity”としています。ある世界標準となる海水を決めて、電気伝導度から塩分に換算する経験式が国際的に定められています。ごく僅かな密度差を検出して海流を計算しなくてはならないので、“塩分”を定義するのに苦労してきた歴史があり、現在でも、その定義や経験式の改良が続けられています(河野, 2010)。本来の塩分は重量濃度なので千分率(‰)や百分率(%)で表されますが、現在、海洋学分野では単位を付けません(あえて付ける場合は、psu:  practical salinity unit, 実用塩分単位を用いる)。ちなみに、強電解質とは水に溶かすと完全に電離する物質のことです。炭酸は海水に溶けると、「H2CO3  HCO3 + H+」と「HCO3 ⇆ CO32 + H+」の2段階に電離して平衡となり、H2CO3CO32まで完全には電離せず弱電解質と分類されます。

※ くれぐれも、「塩分濃度」と表記しないように。「分」と「濃度」はともに割合を意味する言葉です。こう表記すると「頭痛がいたい」みたいなものである。「塩分」もしくは「塩濃度」と表記しましょう。

最終更新日時: 2021年 03月 26日(金曜日) 07:57