地球温暖化のような気候変動は,どのように研究され,どのように海の生物に影響するのだろうか。現在,世界中の多くの研究者が気候変動に関わる研究に取り組んでいる。図1.1 は,学術論文を検索することができるデータベースWeb of Science 上で,「climate change」(気候変動を意味する)をキーワードとして検索したときにヒットした論文の数を年代順に示したものである。気候変動研究に取り組んでいる研究者数を推定することは難しいが,発表された論文数だけを見ても,年々増加していることがわかる(図1.1 a)。これは,それだけ研究ニーズが高まっていると解釈することもできる。
ここで検索ワードとして「marine ecosystem」を加えると,図1.1 b のように,一気に数が減る。2018 年で見ると,「climate change」では3 万1309 報もあるが,「marine ecosystem」では784 報と,2.5% しかない。さらに,「plankton」に変えてみると,その数は133 報まで減少する(図1.1 b)。また,「climatechange」に関する論文のなかで,「marine ecosystem」と「plankton」をキーワードにしている論文の占める割合を求めると,「marine ecosystem」に関しては少しずつ増加しているように見えるが,「plankton」は減少している(図1.1 c)。
ここからわかることは,気候変動に関する研究のなかで,海洋生態系やプランクトンに関連した研究を行っている研究者はマイナーな存在だということ。研究数が少ないために,気候変動によって海洋生態系やプランクトンがどのように影響を受けるのか,はたまた変わっていくのかは,まだまだ研究の余地があるということである。これは,実際に研究している私自身も感じているところである。私たちは「巨人の上に立っている」が,それでも知らないことは多い。