7.観測の記録
CTD観測などと同様に採泥においても試料採取時の船位や水深などの地理的な情報に加え、繰り出したワイヤの長さや採取された試料の概要、試料の分配、行先などを記録するのは研究・調査を行う上で最も基礎的なデータであり、重要な情報となります。そこで、採泥する際の作業記録に特化した観測野帳を用意する機関も少なくはありません。
図12に北海道大学「おしょろ丸」においてマルチプルコアラーを用いた採泥観測で使用されている観測野帳(Multiple Corer Sampling Log Sheet)に記入例として、ある架空の観測結果を記載したものを示します。ここでは「C000」次航海の2021年7月7日に観測点「St.3K」おいて2回の観測を行った場合を想定しています。観測の事前に観測地点名(Station)や日付(Date(UTC))、観測指示者/オペレーター(Operater)の名前を記入します。また、同じ点で何度も観測を行う際は観測作業そのものや採取された試料の取り扱いにおいて混乱しないように、観測作業に対して名称を定めます。それをサンプリング名(Sampling Name) の欄に記載します。また、左下の表面海水温、天候、時間帯の情報もあらかじめ記します。その後、観測作業が開始されたら開始時刻とその時点での船位の情報を記入します(Sampling Start)。観測が進んで、採泥器が着底した時の時刻、船位、水深、ワイヤ情報を記入します(Bottom touch)。採泥器が船に揚収された時にも同様な情報を記入します(Sampling
End)。なお、採泥観測の際にワイヤが真っすぐ下に向かっていれば採泥器は船の真下にあると推測されるので、「Bottom
touch」に記録した船位がそのまま採泥器が着底・採泥した海底の位置と推定されます。一方で、風や潮流によって船の位置が変化し開始位置(希望観測点)からずれてしまうことがあります。このこともこの観測野帳から後に確認することができます。
マルチプルコアラーは最大で
8本のコアが採取されるのでそれぞれに番号(
Core No.)を割り振り、どのような状態で採取されたかを記録します。まず、採泥管ユニットが正常に作動したかどうかを見ます。しっかりと上下の蓋が閉鎖し、採泥されていれば「
Check」欄に「〇」、採取されたはずの堆積物が脱落したり直上海水が隙間から抜けてしまったりしてうまく採取できてなければ「×」とします。「
Memo」の欄にはコアの様子(例えば、底生生物が採取されている、堆積物の色や直上海水が濁っているかどうかなど)、コアの利用方法や試料の行先などを記入します。さらに、「
Remarks」の欄にはこの観測全般において特記事項を記録します。ここには再度同じ場所で観測をする時のために底質の情報を記録しておいてもよいでしょう。