魚類の成長は、光周期、水温、餌およびストレスなどのさまざまな要因の影響を受けています。それらの情報は魚の体内で統合され、その結果、内分泌(ホルモン)系による調節がなされます。内分泌学的には、魚類の成長は成長ホルモン(growth hormone, GH)とインスリン様成長因子(insulin-like growth factor, IGF)-Iにより調節されています(図参照)。すなわち、脳下垂体から分泌されたGHは主に肝臓を刺激してIGF-Iの合成を促し、血中に分泌されたIGF-Iが骨や筋肉などの標的器官に作用して成長を促進します。この他にもGHとIGF-Iがそれぞれ独立して直接的に作用する場合も知られています。これらをGH-IGF-I系(もしくはシステム)と呼びます。
IGF-Iは、血中で特異結合蛋白(IGF-binding protein, IGFBP)と結合した形で循環しています。IGFBPはIGF-Iを運搬するだけでなく、IGF-Iの活性を阻害もしくは促進する役割を持っています。ヒトでは6種類のIGFBPが同定され、それぞれのIGFBPが異なる機能を持つことが報告されており、GH-IGF-I系の重要な構成要素として注目されています。(真骨)魚類でも6タイプのIGFBPが存在しますが、本グループに特有のゲノムの倍化により、12種類のIGFBPが存在すると考えられます。加えて、サケ科魚類では、さらなる全ゲノム重複により22種類のサブタイプが報告され、複雑な機能分担が予想されます。
研究目的 私の研究グループはサケ科魚類の血中に複数存在するIGFBPに着目し、それらの生理的役割を明らかにすることを目指しています。