海氷といっても,氷の結晶部分は真水なので,成長する際,海水中の溶存成分は結晶の外に排出される。追い出された塩は高塩分水として海氷の外部(海氷下の海水)に排出されるが,一部の塩は海氷内に高塩分水として残る。この高塩分水をブラインと呼ぶ。
ブラインは海氷内部に出来るブラインポケットに存在し,海氷の成長にともなって徐々に下方へ移動する。その際,ブラインの通り道が出来る。これをブラインチャネルと呼ぶ。ブラインチャネルは無数に存在し,海氷内部は微細な多孔質状になっている。海氷内のブラインの一部は,海氷の底面から抜けて海水中へ流れ出る。ブラインチャネルは,海水と海氷,大気をつなぐ道なのである。この道を,塩だけでなく,溶存ガス(二酸化炭素など)も通ることが最近の研究で明らかになりつつある。塩を含まない河川や湖沼で出来る氷は大気と水圏の間の遮蔽壁の役割を果たすが,海氷はブラインが物質輸送を担う点で大きく異なるのである。