主題大綱
氷上のオアシス:メルトポンド
夏季になると海氷の表面は気温の上昇や太陽光の影響によって融ける。すると海氷の上にあった雪なども一緒に融けて水たまりができる。この水たまりをメルトポンドという。メルトポンドでは,アルベドが雪や氷の表面よりも低くなる(アルベド値は約0.2 から0.3 ほど)。メルトポンドは熱を吸収し,その熱は周りの氷を融かすことに使われ,どんどんメルトポンドが大きくなっていく。
メルトポンドは美しい。私は大好きである。メルトポンドの水はしょっぱくない。さらに,メルトポンドのなかに藻類が繁茂することもある。これはまさしく氷上のオアシスではないか。夏季の観測で汗だくになったとき,渇いた喉を潤すのに絶好である(とはいえ,あまりきれいな水ではなさそうなので,味見程度にしておくのがいい)。
ただ,メルトポンドはどんどん成長を続け,そのうち海氷の下の海とつながる。そうなると塩辛くなり,底なし池と化す。夜間に冷えて表面が凍り,その上に雪でも降ってしまうと,メルトポンドとそうでない部分の見分けがつかなくなる。気付かずに,はまってしまう人も多数(私もそのうちの一人である)。みなさん,メルトポンドには,くれぐれも気をつけましょう。