極域の海洋での炭素循環過程において,イカイトが注目されつつある。イカイトは,炭酸カルシウムの6 水和塩(CaCO₃・6H₂O)の結晶であり,自然界では主に海底湧水や海底地層などの低温環境下に存在する。結晶が美しいので,海氷内のダイヤモンドと称されることがある。
近年,南極海の海氷内からイカイトが発見された。海氷内にイカイト粒子が存在することは,ブライン中の溶存炭酸成分が結晶化して成長したことを意味する。海氷が融解すると,イカイトの粒子は海氷から放たれ,徐々に溶解しながら沈んでいく。粒子が十分に大きければ海底まで達する。したがって,海氷内でのイカイト生成は,大気から海洋内部へのCO₂ 隔離を促進する,地球の炭素循環過程の一つとして注目されつつあるのだ。