2020 年に,MOSAiC というプロジェクトに参加する機会を得た。2015 年のノルウェー主催の漂流観測以来,2 度目の長期北極観測である。
MOSAiC(Multidisciplinary drifting Observatory for the Study of ArcticClimate)計画は,ドイツAlfred Wegener Institute(以下AWI)の砕氷船「ポーラーシュテルン」を北極海の氷原に閉じ込めた状態で,1 年以上(2019 年9 月から2020 年10 月)にわたり大気,海洋,海氷,生物地球化学,海洋生態系に関するフィールド観測を行う,超長期北極海横断漂流観測プロジェクトである。また,20 か国以上,数百人の研究者が参画する,北極海観測史上最大規模の国際プロジェクトである。1893~1896 年に行われたフリチョフ・ナンセンらのフラム号による北極探検を手本としており,現代の最新技術や知見をもとに,近年激変する北極海を通年で調べ尽くすことが目的である。