陸奥湾では津軽暖流水の流入が弱まり、湾内の海水滞留時間が長くなる9月前半から後半、11月にかけて、冬季鉛直混合が進行し始めていた。海底耕耘を行い、湾内の生物生産性を高めるには、耕耘を行った海水が長期的に湾内にとどまり、かつ植物プランクトンの利用可能な有光層までその海水が供給される必要がある。そのため湾内の海水滞留時間が長く、鉛直的に海水が輸送される秋季から冬季が耕耘に適した季節であると思われる。
海底耕耘は比較的経費が安く、漁業者でも簡易にかつ短時間で行うことができる簡便な手法である。
今後は現場の海洋生態系に著しい悪影響を及ぼさないかどうかを検討していく必要がある。
耕耘前後での堆積物の酸化還元環境へ与える影響、着底トロールによる海底耕耘が底生生物に与える影響などを今後検討が必要である。この課題を明らかにすることで、海の豊かさを守り、 適切な管理のもと養殖事業を行うためのツールとして海底耕耘がより一層有効な手法として確立することが期待される。