海洋の物質循環を考える上で、植物プランクトンによる基礎生産量を見積もることは極めて重要です。近年の地球温暖化に伴う海水温の上昇は海洋の基礎生産量に影響すると考えられますが、従来の基礎生産力推定手法は海表面水温を入力変数としており、地球温暖化による基礎生産量の変化を正しく議論することが困難です。そのため、海水温と独立したパラメータである植物プランクトンの光吸収係数を利用して基礎生産量を推定する手法を考案しました。
図 (a) 光吸収係数に基づいた手法で推定した基礎生産量、(b) 従来の手法で推定した基礎生産量、(c) aとbの差
海洋生態系において、植物プランクトンのサイズ組成は食物網におけるエネルギー転送効率を決定する要素の一つです。そのため、海洋生態系の変化を評価する上で、植物プランクトンサイズ組成を時空間的に広範囲でモニタリングすることが重要です。これまでの研究により、植物プランクトンのサイズやグループによって光吸収スペクトルが異なることが知られています。そこで、光吸収スペクトルに基づいて、植物プランクトンサイズ組成を推定する手法を考案しました。
図 (a) 植物プランクトンサイズ組成の指標であるCSD slopeと、(b) Chl. a の分布
黒のコンターラインは、Chl. a = 0.10 mg m-3を示す