主題大綱
カイアシ類の生物学的な説明
- カイアシ類は、世界中の海洋において、多細胞動物プランクトンの中で最優占する(個体数やバイオマスの約80%程度を占める)甲殻類です。
- カイアシ類の体長は0.5~10 mm程度で、その食性も、多くの種は植物プランクトンや単細胞動物プランクトンを食べる、粒子食性種ですが、他の多細胞動物プランクトンを餌とする肉食性種や、表層から沈降してきたマリンスノーやデトライタスを餌とする、デトライタス食性種も含みます。
- カイアシ類の種分化には餌や食性の違いが大きな影響を及ぼしていると考えられており、種数は中層(200-1000 m)で多くなります。これは中層でカイアシ類の餌が多様であることの反映と考えられています。
カイアシ類の種多様性と群集構造
種多様度は中層(200-1000 m)で高い
𝑀𝑒𝑡𝑟𝑖𝑑𝑖𝑎属の説明
カイアシ類のカラヌス目に属する Metridia属は、体長2~5 mmの典型的な粒子食性種です。
同所的に出現する、同じ属の中でも、口器付属肢の咀嚼歯の形状は種によって大きく異なります。
表層に分布する種の咀嚼歯は滑らかで、深海に分布する種の咀嚼歯は凸凹しています。
同属(𝑀𝑒𝑡𝑟𝑖𝑑𝑖𝑎属)内の鉛直的棲み分け
亜寒帯域には Metridia属の4種が優占する。これら4種の鉛直分布は、互いに同属種間で、0-4000 m水柱内で鉛直的な棲み分けを行っていた。
まとめ
- 多細胞動物プランクトンに優占するカラヌス目カイアシ類の種多様度は水深200-1000 mの中層にて極大を示した。
- カイアシ類群集は水深により異なり、表層(0-500 m)、中層(500-2000 m)および漸深層(2000 m以深)の大きく3群集に分けられた。
- 表面から水深4000 mまで、同じMetridia属の4種は互いに分布震度を変えて、棲み分けていた。
- 同属4種の咀嚼歯の形態は種により異なり、浅い層に分布する種ほど咀嚼歯は滑らかで、深い層に分布する種は凸凹していた。
- 分布水深による咀嚼歯の形態変化は、各々の種が餌としている粒子の形状が、水深により異なる事の反映と考えられた。
次の講義
中層性のカイアシ類について紹介します