陸域から河川や大気を経由して海洋に流入した泥や砂などが海底に降り積もって堆積層が形成されます。また、海洋の生物生産過程あるいは化学的反応によって海中で生じた物質も同時に堆積し、海底堆積物の中にその時の地球環境が刻々と記録されていくことになります。よって、海底堆積物の分析による過去から現在にいたる地球環境変遷の解明はこれから先の気候変動予測に利用できると考えられています。
一方、海底には海嶺のような地殻が剥き出しとなった場所も存在します。地殻を構成する岩石の分布特性は断層やプレート運動の痕跡を探りあてることができ、海底から採取される地殻・岩石の分析から地震発生メカニズムの解明が期待されています。
採取される地質試料は対象とする研究目的や海域によって粒子サイズ、硬度あるいは粘度といった性質が異なるので、効率よく地質試料を採取するために種々の観測機器が開発されています。また、海底の形状や特性を観測する事前に調査して、安全かつ正確に試料採取をするためにマルチナロービーム測深機(海底地形探査装置)やサブボトムプロファイラーといった音響機器を併用することもあります。近年では、海底に天然ガスやメタンハイドレードなど有用資源が存在することが明らかとなり、海底資源調査を目的とした地質試料の採取も行われています。