Chung
水産学部の専門授業「海洋生物地球化学」にて、福島大学環境放射能研究所の高田兵衛先生を外部講師として招聘します。高田先生に講義をお願いする環境放射能学の内容一部をLASBOS Moodleのコースに提供してもらいました。
水産学部の専門授業「海洋生物地球化学」にて、福島大学環境放射能研究所の高田兵衛先生を外部講師として招聘します。高田先生に講義をお願いする環境放射能学の内容一部をLASBOS Moodleのコースに提供してもらいました。
天然放射性核種は海水中に溶けやすいのも多く、ここでは海水に溶けやすい核種を対象に存在量を計算しました。
下の図は海水量を14億km3とした場合の存在量です。単位はPBq(1015ベクレル)、または千兆ベクレルで示しています。この中で一番多いのはカリウム40(40K)の1000垓(1022)ベクレル(Bq)です。ルビジウム87(87Rb)やウラン238(238U)に比べて2桁程多いベクレル量です。
カリウム40 (40K)を重さで言うと400億トンくらいです。
ウラン238 (238U)はおよそ40億トンです。このように海水全体で示すとかなりの天然放射性核種が含まれていることが想像できます。
最後に、天然放射性核種と人工放射性核種を比較します。下の図は薄茶色が天然、ピンクが人工放射性核種です。
トリチウム(3H)とカーボン14(14C)は両方からのソースがありますので、それぞれ分けて計算しました。
やはり圧倒的に天然放射性核種の存在量が勝っていることが分かります。
ただ、トリチウム(3H)については人工の方が多いようです。これは大気圏内核実験によって放出された人工放射性核種が未だに残っているためです。見積もりは西暦2,000年で合わせていますので、2020年であれば、天然と人工の割合は半々くらいまでになっていると計算できます。トリチウムのお話でもしましたが、原子力発電所からもトリチウム(3H)は出てきますが、それよりも宇宙線によって生成される量が圧倒的に多いのが特徴です。カーボン14 (14C)については天然に対して人工の割合が1%程度ですので、年代測定に使うのであれば僅かな誤差程度になります。
このように比較すると、「天然が圧倒的に多いから、人工放射性核種は問題にならない」という議論が展開されかねませんが、そうとは限りません。海洋の海水に均一に放射性核種が拡散していれば、天然も人工も、問題無いと思われます。しかし、放射性核種が、ある場所に、あるとき、特異的に濃縮した状態が危険なのです。この辺を、しっかり判断することが大事になります。