宇宙線って?
宇宙線といっても、ピンとしないかもしれませんが、おおむ銀河系からやってきます。つまり本当に「宇宙」からやってくる「放射線」なのです。宇宙空間には宇宙線を遮る物質(空気)がほとんどないので、陽子等が地球の大気圏外まで到達します。ただし、地球の大気がこの宇宙線と反応して、勢いを弱めてくれるので、地上には強い宇宙線はあまり届きません。
ちなみに飛行機にのると、地上に比べると宇宙線を多く浴びることになります。東京ーニューヨークの片道でレントゲン1回分の宇宙線(放射線)に相当します。
宇宙線で放射性核種が生成されるの?
地球大気中に到達した宇宙線(高エネルギーの一次宇宙線ともいいます)は地球大気中へ進入するときに、大気中の原子核と様々な反応(核反応)を起こし、中性子や陽子を放出します。この中性子や陽子が大気中の元素(窒素とかキセノン)とも反応して、H−3、Be−7、Na−22、C−14、Cl−36などの放射性核種が生成されます。また、宇宙線自体にも中性子や陽子が含まれるので、直接放射性核種が生まれることもあります。
これらの反応生成物を宇宙線生成核種といいます。これらは天然放射性核種に区分されますが、中には人工放射性核種でも作られることもあります(例えばトリチウムとかヨウ素129)。
代表的な宇宙線生成放射性核種を下の表にまとめました。3H、7Be、14C、129I になります。
宇宙線放射性核種の海への供給
地球大気中で生成された赤字の3H(トリチウム)、7Be、14C、129I などの放射性核種は、雲粒に取り込まれて雨として地表面に降ったり、大気の塵に引っ付いて地表面に沈着します。海に供給されるのもあります。放射性核種といっても、原子のまま存在するのではありません(ただし、希ガスは単原子分子)。安定同位体と同じように、化合物として環境中に存在します。地球表層に沈着したこれらの核種は生物に取り込まれることもあります。例えば、14Cは二酸化炭素として植物プランクトンに取り込まれ、有機物となります。そして、食物連鎖により高次生態系に取り込まれます。この14Cを追いかけけば、いつこの生物が死んだのか?など歴史を振り返ることもできます。